成人して、自分の銀行口座を持つ。就職したら給料はその口座に。一人暮らしが始まればこの口座から家賃が引き落とされ、各種保険の支払いもここに。多くの場合、人生は銀行との付き合いなくしては成り立たない、銀行口座はいわば生活者の伴走者のような存在だ。人生の後半戦をよりよく生きるため三井住友銀行が提案する『SMBCエルダープログラム』とは。同社ライフシフト・ソリューション部の久野天平氏に聞いた。

 自分自身で手続きした私名義の銀行口座を持った時、これで少しだけ大人になったな、と感じたものだった。金融機関の統廃合もあり、銀行名は変わってしまったが、今でもしっかりお世話になっている。

 アラフィフの筆者、こんなに長い間継続して保有・使用しているものは銀行口座以外見当たらない。

 数年前からはこの口座を使ってNISAとiDeCoを始めた。その際、仕組みについての懇切丁寧な説明を受け、おかげで金融機関に対する信頼度が増した。

 たまにシステムの不具合などトラブルはあるものの、日本人の銀行に対する信頼度は高いといえる。ただお金を出し入れするとき以外、銀行やそこに持つ口座のことについて心配することはないし、意識することもあまりない。信頼している証拠なのだろう。

 三井住友銀行が主に高年齢層をターゲットにスタートさせた『SMBCエルダープログラム』は、信頼できる銀行だからこそ手に取りたくなる商品だ。三井住友銀行 ライフシフト・ソリューション部 グループ長の久野天平氏は言う。

 「ご存知のように、我が国では少子高齢化が進んでおり、2040年には50歳以上が人口の半分を超えると試算されています。人生100年時代と言われ始めて久しいなか、我々は18年に『人生100年時代プロジェクトチーム』を立ち上げ、様々な議論をしてきました。そのひとつの成果がSMBCエルダープログラムなのです」

 こうしたサービス開発は通常、本部の商品企画セクションなどが中心になって議論されるのだが、人生100年時代プロジェクトチームには、直接顧客に接する現場の行員たちが多数参加したという。「おかげで、よりお客様目線の商品に仕上がっている」と久野氏は胸を張る。

金融だけじゃない

 SMBCエルダープログラムとは、貯金の専用口座を新規開設し、1000万円以上の預け入れを行えば、月額9900円で様々なサービスをお得に利用できるという商品だ。久野氏の言う「お客様目線」とはどういったものか。

 「銀行が提供する商品なのだから、金融関連だけかと思われがちなのですが、そこにはとどまりません」(久野氏)

 『一生涯の安心サポート』『ゆとりの生活サポート』『次世代への安心サポート』同サービスは、その内容を以上の3つに分けて提供している。銀行が提供するサービスなのだから、資産運用関連の商品紹介などが中心となりそうだが、同商品に限っては少し違った目線でのアプローチだ。

『SMBCエルダープログラム』のサービス内容(提供:三井住友銀行)
『SMBCエルダープログラム』のサービス内容(提供:三井住友銀行)
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 「例えば金融関連の分野であっても、高年齢層のお客様に特に引き合いの多い『貸金庫』のご案内などを行っております。料金はサイズによって無料から数万円までの幅はあるのですが、大事なものを保管しておきたい、と物を大事する高年齢層のお客様ならではのお問い合わせを多く頂いております」(久野氏)

 他にも、事前に設定した金額を生活用の口座に自動で振り込んでくれる『きちんと振込(無料)』や本人に代わって、ATMなどでの入出金ができる『代理人キャッシュカード』の発行など。まさに高齢層に寄り添ったサービス展開といえそうだ。

水回り、鍵のトラブルまで

 非金融部門はさらに踏み込んでいる。同サービスでは、三井住友銀行と取引のある複数の優良企業が参加、かゆいところに手の届く様々なサービスを提供する。

 「無料でご用意しているのが、健康相談ダイヤルや、水回りや鍵のトラブル等です。水漏れなどで、例えばパッキンを取り替えたとなると、その実費はいただきますが、その他の出張費や工賃などは原則無料です。こちらはハウスサービス大手のMS&ADグランアシスタンス様にご協力頂いてます」(久野氏)

 家事代行、ハウスクリーニングではダスキンやベアーズなどのサービスを割引で使うことができる。

 また、ゆとりのある高齢層に向けたサービスとして目を引くのがクラブツーリズムの展開する最高級のツアーブランド『ロイヤル・グランステージ』の紹介だ。豪華観光列車の旅や、最上級バス「ロイヤルクルーザー」の旅 、最高級ホテルの貸切企画 など、少人数制で本物志向の贅沢な大人の旅を紹介する。

クラブツーリズムが提供する最上級バス「ロイヤルクルーザー」(提供:クラブツーリズム)
クラブツーリズムが提供する最上級バス「ロイヤルクルーザー」(提供:クラブツーリズム)
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 クラブツーリズム営業企画部・課長の岡本栄氏は次のように語る。

 「現在は既存のサービスのご案内となっておりますが、今後はSMBCエルダープログラムのお客様限定のサービスも展開する予定です」

メガバンク初、選りすぐりのコンシェルジュ

 ネット全盛の時代とはいえ、銀行窓口のフェイス・トゥ・フェイスの対応は安心感が高い。面倒くさがり屋の筆者がNISAやiDeCoを始めてみようと踏ん切りがついたのも、銀行員による対面での説明がきっかけだった。

 前出の久野氏が解説する。

 「SMBCエルダープログラムでは、ご契約いただいたすべてのお客様に専任のコンシェルジュがつきます。さらに、専用のコールセンターである『エルダー専用デスク』を設置し、お客様からのお電話によるお問い合わせにも対応できるよう工夫しています」

『SMBCエルダープログラム』では専任のコンシェルジュ、専用のコールセンターでサービスを提供する(提供:三井住友銀行)
『SMBCエルダープログラム』では専任のコンシェルジュ、専用のコールセンターでサービスを提供する(提供:三井住友銀行)
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 高年齢層ではとくに、電話や対面での対応が選ばれやすい。そこで活躍が期待されているのがコンシェルジュ制度だ。

 三井住友銀行は、資産運用ビジネスを中心とした高度なコンサルティングを行うための金融知識を有するスタッフ「マネーライフパートナー」を全国に1600人抱えている。この中から選りすぐりの200人に介護や医療、そして高齢者対応に関する知識を学ばせ、エルダープログラム専任のコンシェルジュとして現場に送り出す。顧客ターゲットを絞った形で専任のコンシェルジュをこの規模で展開するのはメガバンクでは初の試みとなる。

 「当行では、全国に400程ある支店を58のエリアに分けています。200人のコンシェルジュはこのエリアごとに配置します。ただコンシェルジュは地域ではなくお客様に付くというイメージです。今後ご利用者が増えればそれにあわせてコンシェルジュも増やしていくことになると思っています」(久野氏)

終活にも対応

 世の中には様々な情報が氾濫している。しかしどの分野についても情報は玉石混交だ。玉を選んだつもりで石を掴んでしまうことも多々ある。これを恐れ躊躇し、不安を感じるのが”選択のパラドックス”といわれる状態だ。銀行が厳選したサービスであれば、玉である蓋然性は高いといえる。

 誤った情報に振り回されるには人生はあまりにも短い。メガバンクのこうした取り組みは大歓迎だ。同プログラムには葬儀やお墓、生前贈与、遺言信託などについても相談できる態勢を整えている。

 また、介護が必要になった場合には三井住友銀行と取引のある介護事業者の紹介も可能だ。これらは介護保険サービスなど公的な福祉制度の不得意な分野だ。

 今回紹介したような民間サービスへの登録を機会に、家族で老後のお金や終活についての議論を始めるのもいいかもしれない。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)