パナソニックが性の多様性に取り組んだ理由

 1951年に家庭用洗濯機を発売して以降、幅広い製品を生み出し、多くの一般家庭に「豊かなくらし」を提供してきたパナソニック。その中で「性」をテーマにすることに、社内からの抵抗はなかったのだろうか。

 「最初に“性”という言葉を出したとき、社内で驚いた人がいたのは事実です。当初は生殖までテーマにするアイデアも出していたこともあり、これまでの社内会議ではありえないような単語が飛び出してきたので、“性”をタブー視してきた人たちにとっては衝撃だったと思います。ただ、これからの多様性のあり方を考える上で、“性”は避けては通れないと考えたのです。そして今、フェムテックがクローズアップされるなど、多様性を尊重しようという動きは一層の高まりを見せています。“性”をテーマにしたプロジェクトを、このタイミングに発表できてよかったと思います」(白鳥氏)

 社内では意見交換やヒアリングを重ね、言葉の選び方や表現には細心の注意を払ったという。そして事業部に相談して形にしたのが、冒頭のヴィジュアルだ。従来の「一般的なターゲット像」とは異なる人たちが、自分らしい美しさを求めて美容家電を使っている。

 「女性はわき毛を剃るか脱毛する」という一般論通りにせず、わき毛を伸ばしている女性にとって、男性向けボディトリマーは、毛の微妙な長さや量の調整にちょうどいいという。そして自己表現のひとつとしてメイクを楽しむ男性は、ベースとなる肌を整えるために美容家電のスチーマーを使っている。また華道家の男性は、髪の水分バランスを整えるナノイーを搭載したヘアドライヤーを自慢のひげに当てることで、自分のアイデンティティであるひげを、髪と同様サラサラに保つ。

 今までの常識にとらわれず、こうしたヴィジュアルイメージを提供することで、「こんな使い方もできるのか」と新たなターゲットの関心を引きつける可能性もあるだろう。消費者の多様性、価値観の変化に向き合うことで、企業イメージの向上だけでなく、新たな製品開発やマーケティングの可能性も広がるかもしれない。

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(タイトル部のImage:パナソニック)