様々な形を自在に簡単に作ることができる3Dプリンター。ものづくりの世界で目覚ましいイノベーションを起こしている。この装置と食を結びつける取り組みが注目を集めている。最先端を走るのが山形大学有機材料システムフロンティアセンターの川上勝准教授だ。「ゆくゆくは食の概念を変えることになるかもしれない」と語る川上氏。3Dプリンターの魔術師が見据える未来の食の形とは。

3Dプリンターによるブロッコリーの制作過程(写真提供:山形大学)
3Dプリンターによるブロッコリーの制作過程(写真提供:山形大学)
[画像のクリックで別ページへ]

 年齢を重ねるごとに、嚥下の機能は低下していく。50代の筆者も、飲食物や唾液の飲み込みが上手くいかず、咳き込むことが増えた。同年代とこの話題になると、「お互い年をとったな」と、今は笑っている。しかし実はこれ、全然笑い事ではないのだ。

 高齢者の死亡原因のトップ3はガン、心疾患、肺炎だ。年代や年度によって順位は入れ替わるが、この3つが長年不動のトップである。ここで注目したいのは肺炎だ。高齢者が肺炎で亡くなるということはつまり「誤嚥性肺炎で亡くなる」と言っても過言ではない。

山形大学有機材料システムフロンティアセンター・川上勝准教授(写真提供:山形大学)
山形大学有機材料システムフロンティアセンター・川上勝准教授(写真提供:山形大学)
[画像のクリックで別ページへ]

 50代の筆者のように、誤嚥をしても咳き込むことで異物が気管にとどまることを防げているうちはまだ若いといえる。今後、年齢を重ね、咳き込む力などが衰えてくると、誤嚥した唾液や食べかすが肺まで到達してしまい、そこで炎症を起こして肺炎となる。やがて心肺機能が衰え、死に至る。

 医療機関や介護施設では、刻み食やとろみ食など、飲み込みやすさに気を使った食事を出すのだが、いかんせん見た目が悪い。最終形態といえるミキサー食に至っては、これに食欲を感じること自体、今の筆者には至難の業だ。

 デジタルと食の技術を融合させることで、こうした問題を解決に導こうとする人がいる。山形大学有機材料システムフロンティアセンターの川上勝准教授だ。