お葬式の費用はわかりにくい。耳にタコができるほどよく聞くフレーズだ。何十年もこう言われ続けているのに、いまだにわかりにくいままである。そんな状況にストップかけるべく奮闘するのが、よりそうのお葬式だ。人生の最終盤を安心して迎えるため、これからのお葬式について同社CMOの秋山芳生氏に聞いた。

 筆者は数年前に東京都の某市で母親を看取った。葬儀については、地域密着型の葬儀社にお願いした。地元ではわりと名の知られた業者で、「安心できる」との評判だった。ところが葬儀の当日になって「葬儀場へ心付け」など、明細にない料金が次々に発生し、結局思っていたものよりかなり高額な支払いとなった。

 「葬儀とはそういうものだ」と複数の親戚から言われたが、今でも釈然としない気持ちが残っている。

よりそうCMOの秋山芳生氏(写真提供:よりそう)
よりそうCMOの秋山芳生氏(写真提供:よりそう)
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 121万4000円。これは葬儀にかかる費用の全国平均値だ(第11回葬儀についてのアンケート調査報告書/日本消費者協会)。ただし、ここには参列者に振る舞う飲食費やお寺への「心付け」は含まれていない。それらを合わせると、総額は195万7000円となる。

 故人の残した生命保険をあてるなどして、この金額を賄うこともあるが、そのような準備のない家庭も少なくない。よりそうのCMO(最高マーケティング責任者)、秋山芳生氏は次のように語る。

 「お客様が求めているのはやっぱりわかりやすさです。核家族化がすすんできたことで、家ごとに葬儀に対する考え方が細かく分かれてきています」(以下「」内はすべて秋山氏)

コロナが新たな流れを加速

 かつて、「家」という単位があらゆる意味で今よりも大きく、葬儀は家のためという意識が強かった頃は、参列者の数も多かった。

 「日本人の葬儀のイメージは、多くの人に参列してもらって、故人が亡くなったことをお知らせするとともに、弔いの場として機能するものでした。いわば社会的な意味での式だったのだと思います。しかし、現在のお葬式はもっと個人的なものになってきているのかもしれません」

 もちろん、「お通夜」「告別式」について日にちを分けて多くの参列者を招く、いわゆる「一般葬」は現在でも各地で行われている。一方で、秋山氏の言うように、「個としてのお別れ」を望む声は確実に大きくなっている。

 流れをさらに加速させているのがコロナウイルスという激流だ。

 「今年の1月中旬、弊社とお取り引きのある全国の葬儀社90社に緊急アンケートを取りました。『最も多い葬儀の形式は?』という質問で、お通夜を行わない一日葬と答えた葬儀社が最も多く41%にのぼりました」

 またコロナ前は1割程度あった一般葬は、1%ほどになってしまったという。

入院できないコロナ禍の世界

 お葬式の現場はどうしても「密」状態になってしまう。亡くなるのは高齢者が多いので、参列者もどうしたって高齢者になりがちだ。感染のリスクは大きい。

 「ただ、お葬式はたんなるイベントではありません。故人を送り、別れをきちんと整理する大切な役割を持っています。それなしでは悲しみとの折り合いをつけることができない。だから葬儀そのものをやらないという方向には向かわないわけです」

コロナ禍で葬儀のイメージも変わりつつある。スタッフの感染防止対策も課題だ(写真提供:よりそう)
コロナ禍で葬儀のイメージも変わりつつある。スタッフの感染防止対策も課題だ(写真提供:よりそう)
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 このようなニーズに応える形で打ち出したサービスが「よりそう火葬式」だ。

 「お葬式問題の後ろにあるのは、最後を過ごす場所という問題です。ウイルスの感染拡大を抑えるため、病院に入院すると家族との面会が制限されます。最悪の場合は亡くなるまで会えないことすらある。であれば最期は自宅で。と考える人が増えているのです」

 病院で亡くなった場合は、その日のうちにも遺体の搬出を求められる。病院に出入りしている葬儀社がやってきて、家族の意に沿わないかたちで進むこともあると聞く。一方、自宅で看取ることができれば、その後の段取りについても家族がイニシアチブを握ることができる。

 「ただ、核家族化の進んだ現代においては、住まいも小さくなり、多くの人を招くような葬儀そのものが物理的に難しいという問題もある。そのようなケースでも選んでもらえるサービスとして、弊社が提案しているのが『よりそう火葬式』なのです」

よりそいながら無駄を削ぎ落とす

 「同サービスは簡単に言うと、お通夜と告別式を省略したものです。お花セットプランからシンプルプランまで4つのプランを用意しており、料金は9万6800円から19万8000円です」

 では、基本プラン(14万8500円~)を見てみよう。遺体の安置場所は自宅と葬儀社の両方から選べる。自宅でお坊さんを呼ばずに、ごく親しい者だけで見送る場合に選ぶプランだ。遺体を運ぶ車代。遺体を保存するドライアイス。火葬場や役所との手続き代行。標準サイズの棺一式と、納棺の作業。そして旅立つための仏衣一式や、骨壷一式などが料金に含まれる。

 「お見送りの方が10人くらいまでの規模に適したプランです。加えてお坊さんを呼んでお経をあげてもらいたい場合には、仏具などを用意した『仏具セットプラン(17万500円~)』が便利です」

仏具セットプランのイメージ(写真提供:よりそう)
仏具セットプランのイメージ(写真提供:よりそう)
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 上の料金に加え火葬料が別途必要だ。そちらについては各地域の火葬場によって料金が異なるので一概に言えないが、高くても7万円ほどと考えておけばいいだろう。

 お坊さんを呼びたい場合も、支払いは別だ。こちらも菩提寺のある場合と葬儀社にお願いする場合とでは違ってくるので、別途確認が必要となる。

 「お坊さんについては、弊社でもわかりやすい料金で各宗派のお坊さんを呼べる『よりそうお坊さん便(3万5000円~)』というサービスも用意しておりますので、そちらでご相談にも乗ることができます」

コロナ後も流れは変わらない

 よりそうは現在、全国の4000カ所にのぼる葬儀社や斎場と提携し、いつでもどこでもインターネット経由で依頼・相談が可能なサービスを展開している。

 ところが事業に乗り出した2009年ころ、インターネットでユーザーと業者を結びつけるような業態は葬儀業界にはそぐわない、との見られかたが大方だったという。だがビジネス業界全体が「よりわかりやすく」「より手軽に」との方向に動いている。この大きなうねりは止められるものではない。

 「我々のサービスは既存の葬儀業者さんあってのものです。敵対するつもりはありません。インターネットを使えば24時間365日の受付が可能です。この仕組を業界全体とシェアして、今後も共存していければと考えております」

 便利で価格の面でも手によりやすいサービスでも、知らなければ選択のしようがない。病院で亡くなれば、その日のうちにもご遺体の搬送を求められる。悲しみに沈んでいる間もなく、病院と取引のある業者がやってきてあれよあれよという間に事が進み、いつの間にか思ってもなかったような金額の見積書にサインをするはめになった。そんな経験のある人も多いはずだ。

 これまでは「葬式とはそんなもの」と済ませてきたが、特にコロナ禍が突きつけたニューノーマル後の世界はこれを許さないだろう。大切な人が亡くなったそのときになって慌てないよう、事前にどのようなサービスがあるのか意識しておくことが重要だ。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)