「食のパーソナライズ」へのニーズに応える

 今回のテスト運用には国体出場者から趣味程度まで、様々なレベルの中高生アスリートとその保護者、135組(270名)が参加している。約4割が中学生、約6割は高校生だ。種目はサッカー、ラグビー、バスケットボール、野球が多いが、剣道や陸上、水泳などの選手も加わるなど多岐にわたる。テスト運用は2カ月間の実施を想定し、2021年3月末に開始した。想定よりも早期離脱は少なく、3割強の献立が採用・登録されているという。

 テスト運用により、「体重の減少が遅い」などの目標に対する進捗の遅れについて、どのように補正するかといった課題も明らかになってきた。ビクトリープロジェクトであれば日々の変化を見ながら相談しつつメニュー変更などの調節が可能だが、直接対峙できない勝ち飯AIでは難しい。アプリからのアドバイスメッセージを活用するなど、ビクトリープロジェクトでの対応のアプリへの落とし込み方が課題となっている。

 また、“違和感のない”献立作りも課題だ。例えば、調理時間がかかる料理や、家族全員がそろって食べる必要がある鍋料理やホットプレート料理といった朝食に向かない料理は朝食には提案しないといった調整が必要となる。ほかに、ユーザーにとって“適度に作れそうな感じ”を出さなければ、採用率が下がってしまう。現在、こうした調整は担当者が人力で行っている。「テスト運用などを通じてデータが集まれば、AI(人工知能)で違和感のない献立を学習し作り出すこともできるのではないかと考えている」(勝美氏)。

 同社がアプリ開発を進める背景には、食には栄養・簡便さといった「機能的価値」に加えて、つながり・共感などの情緒的な「ライフスタイル価値」が新たに求められており、こうした価値について最適な食事を求める「食のパーソナライズ」へのニーズが高まっているとの考えがある。そこで後者のライフスタイル価値に向けては食を起点としたソーシャルアプリ「アラターブル」のβ版を2020年6月を公開した。今回の勝ち飯AIは前者の機能的価値に基づいたもので、アスリートを対象に献立を個々人に向けて最適化するものという位置付けだ。

中高生アスリートからキーマカレーのリクエストが送信されると、保護者側のアプリにはリクエストするメニューを組み込んだ献立が表示される。目立つように表示されるが、採用するかしないかは保護者次第だ
中高生アスリートからキーマカレーのリクエストが送信されると、保護者側のアプリにはリクエストするメニューを組み込んだ献立が表示される。目立つように表示されるが、採用するかしないかは保護者次第だ
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 勝ち飯AIでも「つながり」に向けた機能を加えている。中高生アスリートから保護者に向けて食べたいものを伝えられる「リクエスト機能」だ。一番近い食事のタイミングに合わせて保護者に通知が届き、リクエストするメニューを組み込んだ献立がレコメンドされる。「栄養管理ではあるけれどフレキシビリティがあるように、食事を楽しめるように加えた」(勝美氏)。