終活という言葉が使われはじめて久しい。親の終活、自分の終活。立つ鳥後を濁さずというが準備をしておかないと、どうしたって濁るものである。いや、立ち去ってもいないのに、もうすでに濁っている例も増えているらしい。その現状について、終活のアドバイスを行う一般社団法人LMNの遠藤英樹氏に聞いた。

 東京都内にお住まいのAさん男性は関西出身の44歳だ。ある日、実家近くの地域包括支援センターから連絡が入った。

 「お宅の一人暮らしのお母さんが、ゴミ出しのことでご近所とトラブルになっているようです」

 大意要約すると上のような内容だ。

 関西の某市に住む、Aさんの母親は70代の後半だ。要介護「1」なのだが、ひとりで生活できている。コロナ禍での移動制限もあり、Aさんはここ1年ほど母親の顔を見ていなかった。ただ時々電話はするし、前回帰省したときにもべつだん変わったふうはなかったのが──。

 週末にあわてて帰省したAさんは、母親の様子に愕然としてしまった。

 「あんなにきれい好きだったのに、部屋の中はホコリだらけ、洗い物も流しに山盛りだし、しばらく風呂にも入っていないようでした」(Aさん)

 結果からいうと、Aさんの母親は認知症に加えて統合失調症を発症しており、ゴミ出しや日常の買い物などに様々な問題が現れ始めていたのだった。

 実家にとどまって世話を焼きたいのだが、東京での仕事がある。地域包括支援センターの職員に紹介されたのが一般社団法人LMN(LMNはLife&Medical&Nursingの略)だった。

離れて暮らす老親の世話

 LMNの代表理事、遠藤英樹氏が語る。

 「Aさんお母さんの場合、それ以上の一人暮らしは難しかったので、まず地元の病院に入院していただき、統合失調症の治療を行っている間に介護施設を探して契約しました。一連の作業で頂いたのは25万円です」(以下「」内は全て遠藤氏)

LMN代表理事の遠藤英樹氏(写真提供:LMN)

 その内訳は、LMNへの登録料が16万5000円。加えて医療・介護の相談と実働で8万5000円だ。

 「さらに月額1万1000円をお支払いいただけば、日々の連絡窓口や月に一度の面会とその報告などの継続サービスをご利用いただけます。当法人では関東を中心に法人規定の講習を受けた『おもいやりサポーター(50人)』を有しています。なので、関東近県であればどちらにお住まいの場合でもご利用いただける体制です」

 例えば病院の付き添いなどは、現在の医療や介護保険の仕組みでは全てを対応するのが難しい。病院での待ち時間は長くなりがちだ。こうした部分を介護保険サービスでサポートできるように制度設計が少しずつ変わってはいるものの、まだまだ追いついているとは言い難い。このようなケースでも1回1万1000円でおもいやりサポーターを活用することができる。

 ご登場いただいたAさんのように、老親と離れて暮らしている場合はもちろんだが、同居やスープの冷めない距離に住んでいても、LMNの仕組みは利用できる。

終活をアウトソーシングする

 親と老後や介護、葬式や墓のことについて突っ込んだ話をしたことがあるだろうか? 少なくとも筆者はなかった。

 人生の最晩年のあれこれは、決して楽しい内容ばかりではない。誰もが先送りにしたいと思いがちだ。結局、いつの間にか介護が始まり、いつの間にか亡くなる。そんなケースが大半だろう。

 「第三者が入ることで、相談のきっかけになる」と遠藤氏はいう。

 「依頼主本人の終活、依頼主の親、叔父叔母、などいろいろなパターンはあるのですが、まずやるのはゴールの設定です」

 介護が必要になったとき、どんな施設に入りたいか。終末期の医療はどういったものを選びたいか。お墓はどうしたいのか。望む「ゴール」を明確にすることで、コース選びもはっきりする。

 「マラソンだって42.195キロ先にゴールがあるから走れるのであって、それなしでは競技にならない。人生だって同じなのです」

 ゴールが決まれば、そこに至るまでの具体的な相談だ。

 「大切なのはやっぱりお金のこと。貯金、不動産、もちろん借金などについても細かく聞き取ります。その上で、可能なコースづくりのお手伝いをするのです」

図にあるような様々な関連項目に対応してくれる(資料提供:LMN)

 要介護状態であれば、担当のケアマネジャーが似たような相談に乗ってくれるかもしれない。しかし、自立状態であればそれもできない。また、ケアマネジャーは介護保険サービスの相談に乗ってはくれても、相談者の資産状況などを細かく聞き取り検討することはない。

 つまり、LMNは介護保険サービス以外の終活についても相談に乗るわけだ。

親と縁を切りたい人が急増、100万円が目安

 ここまで見てきたように、終活のアドバイスと介護や医療における手続きなどの実務を行うLMNだが、最近とみに増えているのが「全てを任せたい」という相談だ。

 「長年没交渉だったが、身体が弱ってきて心細くなったのか突然のように連絡してきた親をなんとかしたい。子どもの頃に散々虐待を受け、逃げるように故郷を飛び出した今になってその親からめんどうを見てくれと矢の催促。借金を抱えて首が回らなくなった親を持つ。そういった方々からの問い合わせが増えているのです。要するに親と縁を切りたいということですね」

 例えば親との縁を切りたいと考えるBさんと、その親の間にLMNが入り、連絡係として機能することでBさんと親の接触を減らす。これが実際の方法だ。

 ただ、「縁を切る場合にも段階がある」と遠藤氏は言う。

 「親と距離を置きたいという方々にも、何かあったときは連絡を取りたい方もあれば、何があっても一切係わりたくない、死んだときだけ知らせてくれればいい、という人もいらっしゃいます」

 連絡の窓口としてLMNが間に入るわけだが、親子の状況によってかかる料金は違ってくる。

 「親御さんにお金がある場合は、介護や医療についてもそちらで算段できるでしょう。親御さんにお金がない場合はご依頼主である子ども世代に負担を相談するか、最悪の場合は親の生活保護などの検討をしなければなりません。人それぞれケースバイケースなのですが、一応の目安として、100万円ほどで、まるまる我々にお任せいただくことができます」

 内訳はこうだ。LMNへの登録料が16万5000円、「介護・医療の手続き」「葬儀・供養」「死後片付け」などのライフサポートが24万2000円、加えて月に一度の面会などの定期サポート(5年分)が66万円。合計が106万7000円となる。

 「80歳以上であれば『特別終身一括プラン』として88万円のコースも用意しています」

団塊ジュニアが見る親の姿

 「8050問題」という言葉がある。「80代の親元に50代の引きこもりの子世代がいる」という構図が引き起こす問題を指す。さらに最近では70代の親が40代の子ども世代を支える「7040問題」の構図も目立ってきた。

 遠藤代表は「7040問題」には別の視点もあると語る。

 「今の80代以上の人は、戦前の家長制度を良しとする教育を受けています。誤解を恐れずざっくり言うと『親の面倒を見るのは子の務め』という教育です。そんな親に育てられた50代はまだギリギリ親の面倒を見ようとする。ところが今の70代は戦後の教育の中で育ったひとたちです。特に70代前半、つまり団塊世代はあからさまな『アンチ戦前』の風俗の中で育った。そして今、『親を捨てたい』と相談してくるのはほとんどが40代の子ども世代なのです」

 もちろん良し悪しは別だ。しかし、親に対する目線は絶対的に変わってきている。だからこそ終活はより重要な問題となる。備えあれば、憂いは少しくらいは減るかもしれない。

 40代以下のあなた。これを機会に親と自分の終活について考えてみるのはどうだろう。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)