多くの企業からの期待が大きい健康医療領域

 それでは、こうしたフランスのイベントにおいて、どのようなスタートアップ企業に注目が集まっているのか。以下では、筆者が参加したHello Tomorrow Global Summit 2019におけるコンテスト「Hello Tomorrow Global Challenge」の例を見てみよう。今回は、全世界から応募があった約4500社のうち、80社がパリでの最終発表に登壇した。

 このGlobal Challengeで注目されるのが、健康医療領域への注目度の高さである。2019年開催版で主催者が提示した12領域のうち、健康医療関連が3分の1を占めた。具体的には、「デジタルヘルス」「ウェルビーイング」「グローバルヘルス」「産業バイオテク」である。それぞれカバー領域が近いようにも見えるが、これはテーマごとに協賛企業が決まっているから。この分野の企業が、世界中のユニークな研究テーマを求めていることがうかがえる。

 デジタルヘルスにはフランスのセルヴィエ、ウェルビーイングはフランスのロレアル、グローバルヘルスはドイツのバイエル薬品、産業バイオテクはオランダのDSMが、それぞれ協賛している。ちなみにセルヴィエは「WeHealth」、バイエル薬品は「G4A」と呼ぶオープンイノベーション・プログラムをそれぞれ推進しており、今回のイベントでも、社名と並んでこれらのプログラム名を前面に打ち出していた。

バイエル薬品は、同社のオープンイノベーションプログラム「G4A」をアピール(左のパネル)

 グローバル展示会での注目ポイントの1つは、日本国内では見えてこない世界各地の課題が見つかることである。象徴的なのが、デジタルヘルス部門を勝ち抜き、総合優勝したナイジェリアRxALLによる薬の真偽を判別するソリューション。同社は、薬の真偽を判別するための携帯型スキャナー「RxScanner I」を開発した。分子センサーで測定したデータをクラウドに送信、薬の成分分析をして真偽判断する。製薬企業にとっては、非正規の薬を排除することで売り上げを伸ばせる期待がある。

 同社の創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるAdebayo Alonge氏は「年間100万人もの人たちが、フェイクドラッグ(偽造薬)で命を落としている。我々のソリューションは、薬の真偽を簡単に見分けることにより、そうした人たちの命を救うものだ」という。彼らが注目した「薬の真偽」について、日本国内で話題になることは多くないが、地域によっては深刻な課題になっていることがうかがえる。RxALLは、カナダ、中国、ミャンマー、ケニア、ウガンダ、ガーナ、ナイジェリアで事業展開しており、こうした地域においては需要が大きいのだろう。

優勝したのはデジタルヘルス部門を勝ち抜いたナイジェリアのRxALL