病院内部に隠れていた課題を常駐して発見

 巨大産業への成長を見込み、伊藤忠商事、住友商事、丸紅などの総合商社も次々とヘルスケアビジネスへの投資に力を入れている。そんな中で、早くからヘルスケアビジネスに携わってきたのが三菱商事だ。

 1970年代から医療機器の輸入販売や、国内メーカーの海外輸出などを行ってきた。その遍歴をヘルスケア本部戦略企画室長の三池正泰氏はこう説明する。「国内で医療機器を取り扱っているうちに、病院側から経営について相談を受けることが出てきました。病院経営が難しくなったのは近年のことではなく、実は30〜40年前からのことです。何か手伝うことができないかと思い、医療材料の発注や在庫管理などのサービスを始めました」

三菱商事 ヘルスケア本部戦略企画室長の三池正泰氏(写真:佐々木 睦)

 医療機器などを病院に納品するだけではなく、三菱商事の社員が出向先のエムシーヘルスケアから病院に常駐し、病院の抱えるさまざまな課題を目の当たりにして、解決に共に取り組みを始めたのだ。商社の社員が出向先を通じてではあるが、現場の第一線の病院に常駐する経験をするという新しい形は、病院側にも商社側にも多くの学びを生むことになった。そして、より円滑なサービス提供を行うために医療機器輸出入などをしていた子会社3社を、2010年4月にエム・シー・ヘルスケアとして会社として一本化した。

 例えば、治療に使う注射針を発注すると、100本一袋といった梱包状態で届くことがある。すると、それを医師や看護師が使いやすいように10本ずつ小分けにする。使う頻度の高いものを手前、低いものを奥にセッティングするといったようなこともあるという。そうした小さなこと一つひとつが積み重なると大きな時間と労働力のロスになっていく。時折商品を届けに訪問するだけでは見えなかったこうした課題が、病院内部で日々支援することで浮き彫りになってきたという。

 その結果として生まれたのが、院内物流管理システムであるSPD(Supply=供給、Processing=加工、Distribution=分配)である。「病院で日々使われている医療材料はサイズや種類が非常に多く、80年代、90年代は在庫管理や欠品を防ぐことに多くの時間を費やしていました。本来患者さんと向き合う時間をたくさんとるべき看護師さんやスタッフの方々が時間を取られていていたのです。そこで病院におけるいろんな種類の医療材料の発注管理・在庫管理を代わって引き受けようとはじめたのがSPDです」(三池氏)。

エム・シー・ヘルスケアを中心に病院経営のパートナーとして医療の最前線をサポートする(出所:三菱商事)

 SPDは、当時すでにアメリカでは提供されはじめていた。三菱商事は、そのコンセプトを日本に取り入れて事業化し、地域の中核となっているような全国の病院に展開した。これ以外にも、手術室の業務効率化支援や病院の改築や移転支援など、出てくるニーズに次々と対応してきたという。現在では、急性期病院が1500〜1700ある中の20〜25%に当たる約300施設にサービス提供を行っている。