トヨタも出資するファンドから資金調達

 S’UIMINは2018年10月、未来の脱自動車会社を目指すトヨタ自動車もLP(有限責任組合)として出資している「未来創生ファンド」から7億円の資金調達を行っている。さらに、筑波銀行や常陽銀行など、地元の金融機関などを含めて、約2億円を追加で得ている。

 現在は脳波測定デバイス開発の最終段階を迎えており、コードレス、軽量、PSGと同等レベルのクリアな脳波取得という目標を掲げ、“性能”と”寝心地”という相反する要求を満たすことに注力する。睡眠中は無意識下で制御不能な状況にあるため、ひと晩(約8時間)にわたるノイズとの戦いが勝負となる。

 睡眠の測定では、スリープウェル、パシフィックメディコ、大阪大学発ベンチャーPGVなどが、簡易型の睡眠検査機器や脳波センサーを開発しており、既に医療機器としての認証を取得したり、実用化している。遅れはとったが、技術力では負けない自負もある。世界トップレベルの柳沢氏の研究には、優秀な臨床検査技師たちや、日本睡眠学会の要となる臨床医たちが関心を寄せ、顧問やアドバイザーの契約を結んでいる。

 藤原氏は、「柳沢の求心力に支えられている面は大きいが、この事業を通じてその名声がさらに広がるようにしたい」と意気込みを語る。

 中外製薬時代、研究企画部門での広い疾患領域での研究支援と事業開発活動を経験すると共に、4年間米国に滞在して、当時米国で勃興していたベンチャー企業を回って共同研究のシーズを探し歩いた、目利きの経験が発揮されている。

 藤原氏は、ベンチャー経営の成功も失敗も踏まえ、ネットワークを広げており、S’UIMINには、最初から信頼できる、もしくは実績のある人間が集う。認証取得を見据えて、GEヘルスケアで技術部門の責任者や品質管理や安全管理責任者を務めていたメンバーも参加している。

CEOを務める筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長の柳沢氏(左)と藤原氏

 将来的に、開発した測定装置は医療機器としての認証を取得後、家庭用血圧計のように広く普及させ、睡眠障害診断のデファクトスタンダードにすることを視野に入れている。

 まずは、人間ドックあるいは健康診断のオプションとして、貸し出した機器で1週間ほど測定してもらい、睡眠を検査するサービスを目指す。「1週間の測定で健康診断時の一般的なオプション検査と同程度の金額に設定できれば、一定の希望者が出てくるのではないか」。測定だけでなく、何らかの介入(睡眠の指導や治療)というソリューションも用意する予定だ。

 一方、蓄積した膨大なビッグデータから、新しい科学的知見が生まれることも期待されている。例えば、特定の異常な睡眠パターンを示す人に、共通した遺伝子が見つかるといった具合だ。ヒトを含む動物は、なぜ眠くなるのか、なぜ眠らなくてはならないのか──ノーベル賞級の疑問の解明に一役買う可能性もあるのだ。

 「睡眠に対する意識を高めて、行動から変えていける社会を目指し、睡眠に悩むことなく健康に暮らせる社会を実現したい」。描く夢は、社会変革だ。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)