「第24回 日本医療情報学会春季学術大会」(主催:日本医療情報学会)が、2020年6月5~6日に開催された。当初はつくば国際会議場(茨城県つくば市)での開催を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてオンライン開催で行われた。

第24回 日本医療情報学会春季学術大会のポスター。当初はつくば国際会議場での開催する予定だった(出所:日本医療情報学会)

 日本医療情報学会 代表理事の中島直樹氏(九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター長)が大会企画で触れたのは、患者が自らの医療・健康情報を収集し一元的に保存する仕組みである「PHR」について。そのバックアップの仕組みの構築が必要だと提言した。

集積データの継続性確保に課題

 現在、さまざまな民間事業者がPHRサービスを展開している。ただし、そこには課題があると中島氏は指摘する。それは、集積したデータの継続性の確保だ。

 実際、PHR事業者が事業継続できなくなったとき、それまで蓄積したデータが消滅してしまう危険性がある。仮に預けておいたデータが残されたとしても、別のPHRへのデータ移行に大きなコストが発生し、実際にはデータの継続は不可能になる懸念があると中島氏は見る。

九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター長の中島氏(写真:オンライン講演の画面キャプチャー)

 そこで中島氏が提言するのがバックアップの仕組みの構築だ。「(バイタルデータなど)利用価値のある標準的なデータは、相互運用できるデータ形式でバックアップしておく必要がある」(同氏)。

担うのは民間か公的機関か

 このうち「相互運用できるデータ形式」については、既に大手PHR事業者の多くが実装しているという。「生活習慣病ミニマム項目セット」と呼ぶデータ形式である。

 具体的には、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、慢性腎臓病の4疾患に対してそれぞれ決められている2種類の項目と「PHR推奨設定」と呼ぶ項目で構成されている。PHR推奨設定とは、血圧や血糖値など測定項目ごとにリスクを4段階に分けたときの各データの範囲値、アラートを発生する際の上下限値、前回測定値からの差異によるアラート値などである。

 中島氏がバックアップの仕組みを求めるのは、この生活習慣病ミニマム項目セットについてである。それに向けては、まずは「民間事業者で行うのか、公的機関が行うのかの議論がある」(同氏)という。今後の早急な検討の必要性を訴えた。

 今後、患者や家族が治療方針の決定に参加し、自ら積極的に治療にかかわる患者中心の医療が求められている。その実現に向けて、患者と医療者の情報共有のためのPHRの役割はますます高まると中島氏は言う。そのためにも、バックアップの仕組みの構築は、「必ず乗り越えるべき課題だ」(同氏)とした。


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