低栄養の母体環境が「栄養をため込みやすい」体質を作る

 もちろん、小さく生まれたら全員がそうなるというわけではなく、発症する確率が高くなるということだ。福岡教授は「生活習慣病などになりやすい“体質”を持って生まれることになる」として、次のように続ける。

 「母体がやせて低栄養状態にあると、胎児も低栄養下の子宮内で育つことになる。いわば胎内環境が飢餓状態にある。すると、その環境に適応する形で遺伝子の働きを調節する変化が生じ、少ない栄養でも生き抜くことができる体質が形成される。ところが、生まれた後では過剰な栄養や運動不足、ストレスなど現代社会特有の生活が待ち受けている。少ない栄養で生きられる体質があるがゆえに、その影響をより強く受けることになり、結果として生活習慣病を発症しやすくなる」

 このように病気になりやすい体質を持って生まれたところに、望ましくない環境が加わることで、生活習慣病は発症する。つまり病気はこの2段階を経て発症するというのが、「DOHaD学説(Developmental Origins of Health and Disease=ドーハッド/生活習慣病胎児期発症起源説)」だ。1980年代後半に英国のデビッド・バーカー博士が、出生体重が小さいと成人になってから心筋梗塞のリスクが高くなるという疫学調査結果を報告。子宮内で胎児が低栄養状態にさらされるとエネルギーをため込みやすい体質に変化し、生活習慣病の発症がプログラムされることになるという「胎児プログラミング仮説」を提唱し、それがDOHaD学説へと発展した。福岡教授は日本におけるDOHaD学説の第一人者で、「日本DOHaD学会」の代表幹事も務める。