生活習慣病になりやすい体質は3世代先まで続く

 「厄介なのは、そういった体質が1代限りで終わらず、世代を超えて受け継がれること。これまでの研究によると、3世代先まで続くことが判明している。また、この体質は、第1段階として受精から2週間くらいの間に作られることもわかっている。この期間は妊娠にはまだ気づかない時期。つまり、妊娠に気づいた時には最初の重要な変化はすでに終了しているということだ。そして、これに次いで妊娠中の子宮内環境の影響も受けながら体質が作られていくことになる。だからこそ、妊娠する前からしっかり栄養を摂って、適正な体格を維持しておくことが重要になる」と福岡教授は強調する。

 気づいたときにはすでに遅い……少々暗澹とした気持ちになるが、もちろん対処法はある。福岡教授は、「自身の健康と次世代の健康の両方を守るためにも、次の4つをぜひ実践してほしい」と提言する。

1) 妊娠出産を望む女性は「やせない体」づくりを!
やせて栄養が足りない状態は、当の女性にさまざまな不調を招く。疲れやすく、仕事などの生産性も落ちがち。また月経が止まったり、妊娠しにくくなったりすることも。骨が弱くなって、将来、骨粗鬆症になったり、寝たきりなったりするリスクも高まる。やせの代償は大きい。

 では、どのくらいの体格が理想的だろうか。「BMIだと22を中心にして、その前後の20~23くらいが、最も健康で妊娠しやすく、かつ胎児にとってもよい体格といえる。妊娠出産を考えている女性はこのくらいをキープするよう、日頃からしっかり栄養を摂ってほしい」と福岡教授は言う。

2) 妊娠中も十分に栄養を摂る
 食事摂取基準(2020年版)では、20代女性の1日の推定エネルギー必要量は2000kcalで、さらに妊娠中は初期で50kcal、中期で250kcal、後期で450kcalを上乗せする必要があるとされる。しかし、実際には十分量を摂れていない人が多い。「なかには妊娠していない時の必要量にも満たない例があり、妊婦の低栄養は深刻な問題だ。妊娠中は初期、中期、末期と段階に応じて必要十分な栄養をバランスよく摂ることが何より重要。もしも、やせたままで妊娠した場合は、通常体重の人以上に栄養をしっかり摂り、妊娠中に12kg程度は体重を増やすようにしてほしい」(福岡教授)

3) 小さく生まれたら、スキンシップと肥満予防を
 たとえ小さく生まれたとしても、将来の生活習慣病の発症リスクを減らすことは可能だと福岡教授は助言する。「生まれた直後から積極的なスキンシップを心がけてほしい。スキンシップをとると赤ちゃんの大脳の海馬ではストレスに対する抵抗性が高まって、糖尿病の発症リスク低下も期待できる。可能なら母乳哺育を。スキンシップも密になるので、より効果的だ」。

 また、出生後は急激に太らないことも重要だという。少ない栄養で生きられる体質があるところに過剰な栄養を与えてしまうと肥満を招き、生活習慣病につながる。まさに「小さく産んで大きく育てる」の落とし穴に入ってしまうからだ。

 「年齢ごとの標準的な成長曲線チャートが作られているので、それに発育状態を記入していくと、太りすぎかやせすぎかがよくわかる。発育チャートは日本小児内分泌学会のHPで紹介されているので、参考に。親御さんは、できればお子さんが高校生になるくらいまで、この発育チャートに記録し、肥満にならないよう気をつけてあげてほしい。このチャートを付けることで、肥満だけでなく低身長ややせも早く見つけることができる。また、小さいころから運動習慣を身につけておくことも大切」と福岡教授。

 ところで、出生時の適正体重とはどのくらいだろうか。福岡教授は次のように話す。「日本での適正体重についての調査は行われていないが、1970年代の平均出生体重は約3200gで、現在は約3000g。これまでの研究報告などを勘案すると、3000~3800gが望ましい出生体重といえるだろう。もし2700g以下ならば、親御さんは上に述べた点に注意しながら育児をしてほしい。また妊娠糖尿病を合併していた場合は、お子さんの将来の健康管理について主治医の先生とよく相談を。対応策はあるので、決して不安を抱く必要はありません」

4) 出生体重を知って、それに応じた健康管理を
 自分が生まれたときの体重は何gだったか──。「それを知っておくと、一生の健康管理ができる。ぜひ親御さんに聞いたり、母子手帳を見たりして確認を」と福岡教授は呼びかける。実は、男性の方が小さく生まれた影響を受けやすいという。生活習慣病は女性より男性に多いが、そこには性差も関係しているらしい。「出生体重は女性だけの問題ではなく、男性の問題でもある。もし出生時の体重が標準よりも小さかった場合は、病気になりやすい体質を持っているということ。それを事前に知っておけば、生活習慣に気をつけたり、健康診断を受けたりして予防に努めることもできる」。健康管理は生まれたときから切れ目なく、が理想的ということだ。