民間主導の乗り合い送迎サービス「チョイソコ」もスタート

 昨年7月、豊明市で新たな外出支援策が動き出した。高台の仙人塚地域でスタートした乗り合い送迎サービスの実証実験だ。自動車部品メーカーのアイシン精機が実施主体で、豊明市とドラッグストア運営のスギ薬局が企画・推進パートナーで実施した。

 「チョイソコ」と名付けられたこのサービスは、タクシーと路線バスの中間の形態といえる。乗客8人が乗れるバン1台を使い、平日の午前9時から午後4時まで、事前に登録した住民から目的地や到着希望時刻を電話で受け付け、決まった場所に迎えに行く。アイシン精機が開発した配車システムを活用し、できるだけ効率的な運行を図る。

 買い物と通院が高齢者の主な外出ニーズであることから、藤田医科大学病院をはじめ、診療所、市内にあるスギ薬局の店舗など30数カ所の行き先に停留所を設けた。乗り場の停留所も30数カ所設置。住民が行き慣れたゴミ集積所などに、「チョイソコ」のロゴが入った看板を掲げた。登録者は無料で利用できる。豊明市は事業者と対象エリアの住民との仲介役などを担い、住民説明会の開催を区長にもちかけたり、停留所の設置の協議で両者の間に入ったりした。

乗り合い送迎サービス「チョイソコとよあけ」の実証実験は、バン1台を使用(写真左)。高齢者の通院・買い物ニーズに応え、医療機関やドラッグストアなど約30の行き先に停留所を設けている(写真右)

 当初70人の登録で始まったこの実証実験は、10月から3地区に対象を拡大し、現在の登録者数は約400人になった。免許を返上したり、足腰が弱ってきて外出しづらくなったりした高齢者を中心に、子供連れの若い母親の利用もある。

 2019年は、有償の実証実験をスタートさせる計画だ。アイシン精機イノベーションセンターの野々山茂男氏は、「利用者へのアンケートでは、『200円ぐらいならお金を支払ってもいい』という結果が出た。移動にかかるコストは、普通は移動する人が負担するものだが、このサービスでは行き先の医療機関や薬局などから協賛金をもらうことを考えている。大きな利益は出なくても黒字にはしたい」と話す。

 またスギ薬局事業推進室課長の山下哲矢氏は、「ドラッグストアの顧客も年齢が上昇していくだろうから、高齢者が来店できない状況になると売り上げに響く。それを解消するための選択肢の一つとしてこの実証実験に参加している。乗客数を効率的に増やしていくことで協賛のメリットを拡大し、互いに協力して『チョイソコ』の魅力を高めていく必要がある」と話す。

 一方、豊明市役所の松本氏は、「当市はコミュニティバスも運行しているが、多額の税金を投入している割に利便性は高いとはいえないのが実情。『チョイソコ』は生活インフラといえるから、最初に取り組んだ事業者は先行者利益が得られるし、必要性が高まればさらに可能性が広がる」と、外出支援サービスも民間企業によるビジネスとして提供できるとみている。

 介護保険から保険外サービスへという発想の転換によって、「高齢者になっても外出したくなるまちづくり」を目指す豊明市。その取り組みは全国の注目を集め、自治体職員や議員の視察が相次いでいる。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)


出典:「新・公民連携最前線」2019年2月5日付の記事より