アマゾン ウェブ サービス(AWS)の日本現地法人であるAWSジャパンは2021年6月16日、「社会的課題への糸口:医師起業とヘルステック~テクノロジーが加速させる医師の起業~」と題したオンラインセミナーを開催した(関連記事:パブリッククラウドの視点で見るヘルスケアスタートアップ)。本記事では、セミナー後半で実施された、2人の医師起業家である、アンター 代表取締役の中山俊氏、コネクテッド・インダストリーズ 代表 園田正樹氏をゲストに迎えたパネルディスカッションの様子を紹介する。

AWSジャパンのオンラインセミナーから。下部左が園田氏、下部中央がモデレーターを務めたAWSジャパン スタートアップ事業開発部 本部長の畑浩史氏、上部中央が中山氏、上部右が左近氏(出所:オンラインセミナーのスクリーンショット)

 アンターは、Doctor to Doctor(DtoD)のオンラインサービス「AntaaQA」を主軸とする。医師が実名で登録し、オンライン上で医師同士が質問と回答を交換できる仕組みで、2020年5月には登録医師数が1万人を突破した。質問の内容は患者の症状、診療方針、研究、論文内容など多岐にわたる。

中山氏は鹿児島大学医学部を卒業後、翠明会山王病院整形外科医として勤務した(出所:AWSジャパン)

 中山氏はAntaaQAを「現場の判断を助け、医師が相互に相談しあえるプラットフォーム」と位置づける。AntaaQAは文字中心のチャット形式だが、現在は資料を共有できる「AntaaSlide」、動画学習サービスの「AntaaChannel」も展開。COVID-19でニーズが高まったオンラインの視覚的訴求にも力を入れる。

 一方、コネクテッド・インダストリーズは、2020年から病児保育支援システム「あずかるこちゃん」を提供している。病児保育とは病気にかかった子どもに対する保育支援で、保育士、看護師、栄養士などの専門家が施設でケアをする。予期せぬ子どもの体調不良に悩むワーキングマザーにとっては心強い味方と言える(関連記事:子育て支援全般の行政サービスをアップデートする)。

東京大学大学院で公衆衛生学を学び、産婦人科医でもある園田氏(出所:AWSジャパン)

 日本では約2000カ所もの施設があるとされるが、利用率はわずか3割ほどに過ぎない。その原因を園田氏は「認知不足と使いにくさ」にあると説明する。「施設を利用するには紙の利用申請書を事前登録せねばならず、未だに95%が電話予約しか受け付けないアナログな世界。この課題をオンラインで解決したいと思い起業した」(園田氏)。

「トップの医師が起業する流れが出てきた」

医師の起業の現状について教えてほしい。

中山氏 私が起業した5年前はまだまだ少なく、一回り上のメドピアの石見(陽)さんなどがネットワーキングなどで奮闘していた印象。だが今は、確実に起業する医師が増えており、SNSを通じて起業した情報がたくさん入ってくるようになった。

園田氏 私は同世代の中山さんが起業したことで勇気づけられた。現在のトレンドとしては、専門医にしかできない分野での起業が増えてきたように思う。例えばiMed Technologiesの河野健一先生は脳外科の臨床を通じて、脳血管内手術のリアルタイム手術支援AIを開発している。トップの医師が起業する流れが出てきたと思う。

中山氏 確かにその通りだ。数年前は医療現場の共通課題を解決するサービスが多かったが、画像の読影など専門性が高い医師でないとわからない課題に挑む人が増えてきた。AIやソフトウエアによるサービス開発が発展したおかげだろう。

園田氏 テクノロジー活用が身近になってきている。大学の講座がAWSと組んでAI開発を手がける事例などは、かつては想像できなかった。