尿を使った郵送栄養検査サービス「VitaNote」を手掛けるスタートアップのユカシカド(関連記事:「栄養」の可視化、トップランナーとして駆ける)。このほど、テストペーパーをスマートフォンで撮影するだけで食事の偏りを評価できる栄養検査サービス「VitaNote Quick」を開発。2020年6月3日からクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」で予約販売を開始した。“尿を郵送しない”同サービスの狙いを追った。

 VitaNote Quickは、専用のテストペーパーを2秒間尿に浸し、専用アプリを使って撮影することで、食事バランスの偏りを即時に10点満点で評価する栄養検査キットである。具体的には、微量栄養素であるビタミンとミネラルの吸収量が必要量に対して足りているのか不足しているのか、動物性食品と植物性食品のバランスは保てているかを調べることができる。自宅で検査できるので、尿を郵送する必要がない。

栄養検査サービス「VitaNote Quick」(出所:ユカシカド)

 同社が以前から提供しているVitaNoteは、専用キットで採取した尿を検査センターに郵送すると、約1週間で栄養バランスや吸収量を分析してくれるサービスである。個別の栄養素がどれだけ吸収されているかなどの精密な検査ができ、チャットで栄養改善のアドバイスが受けられたりする。

 VitaNoteが食事や栄養に関して明確な悩みを持つ人向けに精密な検査を行うサービスであるのに対して、VitaNote Quickは明確な悩みはないが栄養バランスの状態を大まかに知りたい人に向けたサービスと位置づける。メインターゲットとして想定しているのが、「カップラーメンを食べるときに野菜ジュースを飲む人」とユカシカド 代表取締役 CEOの美濃部慎也氏は説明する。

 栄養の偏りは気にしているけれど、自分で改善できている自信がない人達のことだ。ユカシカドの調査では、6割の回答者が栄養バランスの悪さを自覚していたという。

ユカシカド 代表取締役 CEOの美濃部慎也氏(写真:川島 彩水)

 この層の人達は、現状自覚できる症状が顕在化しているわけではないため、詳細に調べたいわけではなく、大まかに自分の栄養状態がどうなのかを知りたがっている。ここに焦点を当てた。まずは、VitaNote Quick栄養状態のモニタリングをする入口として使ってもらいたいとしている。

 理想的な使い方としては、「VitaNote Quickを使って定期的に栄養バランスが保てているのか確認しながら、半年から1年に1回はVitaNoteを使って高精度な検査をしてほしい」と同氏は言う。

食事写真からの栄養分析の限界を打破

 VitaNote Quickでは、同社が独自で開発した、体に吸収された栄養素の量を尿から推定できる技術を活用している。VitaNoteで蓄積されたデータを使い、ビタミンやミネラル、食事バランスを反映する複数の尿中バイオマーカーを同定できたことで、ビタミンやミネラルの吸収量や食事バランスを判断できるテストペーパーの開発に至った。

テストペーパー(出所:ユカシカド)

 検査の対象であるビタミンやミネラルは、体の調子を整える役割を果たしている。車で言えば、たんぱく質は"ボディー"、糖質や脂質が"ガソリン"に当たるのに対してビタミンやミネラルは「調子を整える"エンジンオイル"」と美濃部氏は説明する。そのため、ビタミンとミネラルがどれだけ摂取できているかが、体を好調に保てるかどうかの指標となるわけだ。

 最近では、食事の写真を分析してバランスの良い食事かどうか調べる食事調査を行えるアプリも登場しているが、実はこの方法には「限界がある」と同氏は話す。食事調査では食品成分表を基に栄養成分を分析しているため、例えば、トマトとラーメンとチャーハンを混ぜた独自料理を作った場合、食品成分表に書かれていないので栄養成分が分からないのだ。

 さらに、VitaNote Quickで分析対象にしている微量栄養素のビタミンやミネラルは、季節や調理法により含有量が大きく異なる。同じトマトでも、どの産地のものを使ってどういう調理を何分行ったかによって、含まれている微量栄養素が5倍近く変わる場合もあるほどだという。

 同じ料理でも、調理の途中で塩をどれだけ入れたかまでは画像解析などによる食事調査では分からない。「炭水化物をどれだけ摂取しているかの判断には食事調査が適している部分もあるが、ビタミンやミネラルは微量しか含まれていないため、食事調査で差異を判断するのは難しい」と同氏は話す。

スマホが普及している途上国でも

 実は、美濃部氏は、VitaNoteを構想していた10年以上前から、VitaNote Quickのビジョンを描いていたという。根底にあったのは、発展途上国の子供たちの栄養状態を把握できる手段を作りたいという思いだった。

 過去に発展途上国を訪れた同氏は、野菜や魚は廃棄されるほどあるのに、砂糖がたっぷり含まれたお菓子やジュースを手にする状況を目の当たりにした。正しく栄養を摂取するための物差しがないため、バランスの取れた食事ができていなかったのだ。検体の輸送を必要とせずに栄養検査を行えるVitaNote Quickの開発によって、こうした事態を解決する手段がようやく得られた格好だ。

 発展途上国では、意外にもスマートフォンの普及率が高く、「どんなに貧困でもスマートフォンは持っているという人が多い」と同氏は話す。こうした実態を受けて、発展途上国でも、個人のスマートフォンを使ってテストペーパーを撮影してもらうことを想定している。

結果の画面イメージ(出所:ユカシカド)

 国内においては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、「健康に対するリテラシーが上がっている」と同氏は指摘する。予防や免疫を意識する人が増え、多くの人が予防に重要な運動と休養、栄養の3つを大切にしようと考え始めている。

 特に、子供がいる家庭からの問い合わせが増えているという。休校や時差通学を余儀なくされ、これまで、学校や幼稚園の給食に一部頼っていた子供の栄養管理を「家庭で行おうとする人が増えたからではないか」と美濃部氏は見ている。

 国内でも、カロリーは足りているけれど偏食や好き嫌いの影響で生命維持に必要な栄養物質が不足している新型栄養失調の子供が増えているといった報告がされている。健康へのリテラシーが上がり、エビデンスに基づいた正確な情報を参照する習慣がついてきたコロナ禍だからこそ、客観的に栄養状態をトラッキングして食生活を見直すことへの機運が高まりそうだ。

(タイトル部のImage:出所はユカシカド)