動きなどによって加わる力を電気エネルギーに変換する圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」。セラミック技術に基づく電子デバイスなどを手掛ける村田製作所と、繊維原料や衣料製品をはじめとする幅広い繊維製品を扱う帝人フロンティアが共同で開発した。人の動きが、着用した衣類の機能効果を高めることに着目し、「モチベーショナルファイバー」をコンセプトとした新領域開拓に乗り出す。まずはコロナ禍で注目が集まる「マスク」のテストマーケティングを開始する。

 2020年以降のコロナ禍で急激に高まったマスク需要。マスク市場は2020年に約5000億円市場になるなど急拡大した。現在、マスク市場は多様化が進んでおり、様々な素材や機能のマスクが登場している。こうした中で、一風変わったマスクが登場する。村田製作所と帝人フロンティアが2020年4月1日にを設立した合弁会社、ピエクレックスが開発したマスク「PIECLEX MASK」だ。「笑う」「しゃべる」「噛む」「歌う」といった顔の動きによって抗菌効果が高まる。

ピエクレックスが開発した「PIECLEX MASK」。マスク本体の外層にPIECLEXを採用する。パッケージの右上には「あなたを笑顔にするマスク 生地が伸縮することで機能効果を高めます」の文言がある(撮影:スタジオキャスパー)
ピエクレックスが開発した「PIECLEX MASK」。マスク本体の外層にPIECLEXを採用する。パッケージの右上には「あなたを笑顔にするマスク 生地が伸縮することで機能効果を高めます」の文言がある(撮影:スタジオキャスパー)
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 同マスクの効果は、ピエクレックスが扱う繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」が生み出している。ひずみや応力により電気を発する性質を持つポリ乳酸を原料とした繊維で、生じる電気エネルギーを抗菌機能の実現に活用している。発生した電気により繊維間には1V程度の電界ができる。流れる電流はpA(ピコアンペア)~nA(ナノアンペア)オーダーと微弱であるものの、繊維間に捕らえた菌を死滅させることができ、抗菌効果を発揮する。笑う、しゃべる、噛む、歌うといった顔の動きは飛沫の増加につながりやすい。PIECLEXを利用すればこうした飛沫による菌の放出が増えがちなシーンでこそ、抗菌効果を高く発揮できるというわけだ。また、ニオイの元となる飛沫などに含まれる菌を抑制することで、二次的な効果として防臭機能も期待できるとする。

ポリ乳酸素材は応力が加わると電気が発生するという特徴を持つ。ポリ乳酸を原料とした繊維の場合、応力によって生じる電気により繊維間に電解ができる(図:ピエクレックス)
ポリ乳酸素材は応力が加わると電気が発生するという特徴を持つ。ポリ乳酸を原料とした繊維の場合、応力によって生じる電気により繊維間に電解ができる(図:ピエクレックス)
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 PIECLEXは「電気のプロ」である村田製作所と「繊維のプロ」である帝人フロンティアが共同で開発した繊維だ。両社は2020年4月に合弁会社ピエクレックスを設立、実用化に向けた取り組みを進めてきた(関連記事:動力が電気に変わり抗菌機能を発揮、村田×帝人の新型繊維)。“動きにより効果を発揮する”という繊維の性質を“機能を得るために動きたい!というモチベーションを向上させる”と読み替え、「モチベーショナルファイバー」を同繊維のコンセプトとして掲げ、プロモーションに力を入れている。