1日20分、6週間のアプリ操作で有意な変化

 私たちの研究チームはこれまでに、脳トレゲームや音読・計算トレーニング、処理速度ゲーム、サーキット運動トレーニングを実施すると、高齢者の認知機能が上がることを明らかにしてきました。

 今回は新たに自宅のテレビで実施できるトレーニングアプリを開発しまして、効果の検証を行いました。具体的には健康な高齢者60人を募集して、その人たちを2つのグループに分け、無作為比較対照試験を実施しました。運転技能向上トレーニングアプリを実施する「運転技能向上アプリ群」と、関係ないゲームを実施する「対照アプリ群」と名付けました。なお、このような試験は医療分野で使われている根拠の質の高い研究手法です。

 このトレーニングアプリは、自宅のテレビにセットトップボックスとWiFiルーターを接続し、テレビのリモコンで実施します。

 アプリの中身としてはゲーム形式になっており、素早く状況を判断するゲーム、2つの事柄に同時に注意を向けるゲーム、移動する物体の動きを予測するゲームで構成されています。

 例えば、表示と意味がちぐはぐになって表示されている対象物を正しく見分けて質問に正確に答える、画面上にいったん登場し隠れた物体が再び出てくるタイミングを予測してボタンを押す、といった内容が盛り込まれています(図1)。そしてゲームの成績によって難易度が変化します。つまり、できるプレーヤーの場合は、より難しくなります。

図1●運転技能向上トレーニングアプリのコンセプトを示した図。Aはアプリの全体構成で、テレビにセットトップボックスとポケットWiFiを接続して稼働させる。B、C、Dはアプリの画面例。表示と意味がちぐはぐな質問に正確に答えたり、タイミングを見計らってボタンを押したりといった内容が盛り込まれている。なお今回の研究は仙台放送との共同研究となっている(出所:東北大学加齢医学研究所)

 一方、対照アプリ群のゲームは、早く回答する必要はありませんし、難易度も変化しません。

 両群ともに週5回以上1日20分、6週間、ゲームをしてもらいました。なお、トレーニング期間の前に、自動車教習所で対象者に検査を実施しています。運転技能の検査、認知機能の検査、感情状態などを聞く心理検査です。そして6週間のトレーニング期間を経た後にも、同じ検査を実施しました。

 これらの検査結果を使ってトレーニングアプリの効果を解析したところ、運転技能向上アプリ群のほうが、対照アプリ群よりも自動車運転技能、認知力、抑制能力、活力気分が向上することが明らかになりました(図2)。

図2●運転技能向上トレーニングアプリの実験結果。対照アプリ群と比較・解析したところ、運転技能向上アプリ群のほうが、対照アプリ群よりも自動車運転技能、認知力、抑制能力、活力気分が向上することが明らかになったという(出所:東北大学加齢医学研究所)

自動車運転技能は変化量が特に大きいように見受けられます。

野内 あくまで解析データの変化量なので、このポイントの数字や差異そのものに大きな意味があるわけではありません。ですが、運転技能そのものはもちろん、それを支える処理速度や実行といった認知機能を示す項目が、トレーニングの効果を統計的に有意に示しているのは確かです。