「早期発見の可能性」にも期待

 現在、マンモグラフィで乳がんを見つけにくいデンスブレストの人に対しては、自費診療にはなるが、超音波(エコー)検診の併用が推奨されている。マンモグラフィとエコーを併用すると、マンモグラフィ単独よりも乳がん発見率が1.5倍増えるからだ。では、エコーを受けた方がいい人、つまりデンスブレストの人はどうやって見分けるのか。「現状では医師がマンモグラフィ画像を見て判定している。目視のため医師によって見立てが異なり、6割程度しか判定が一致しないとの報告も。そこで、ここでもAIを使い、デンスブレストを客観的に定量化することを考えた」と井上氏。

 方法は、マンモグラフィ画像の脂肪組織の輝度(白さ)を基準にして、乳腺の輝度を相対的に数値化するというもの。それを視覚化した「ヒートマップ」が、下の画像だ。脂肪の輝度を1として、それよりも輝度が高くなるとピンクやオレンジ、赤などの色で示される。この相対輝度に基づいて算出すれば、乳腺濃度の定量化が可能だという。この技術に関しては目下、特許を申請中。日本人のデンスブレストを定量評価する研究も進行中だ。

乳腺濃度が高くなるほど赤やマゼンタ、オレンジ、ピンクが多くなる。画像中の脂肪を基準にして色分けするので、マンモグラフィの機種が違っても同じように算出できる(図:井上氏提供の画像を基にBeyond Healthが作成)

 このヒートマップには、乳がんを早期発見できる可能性も秘められている。下の画像は、2018年に乳がんが見つかって手術をした患者のもの。上段のマンモグラフィ画像では2018年になるまで特に変化が見当たらないが、下段のヒートマップ画像を見ると2015年の段階から赤い部分、つまり乳腺濃度の高い場所が見てとれる。目視では判定困難なわずかな変化が、すでに3年前から現れていたわけだ。「乳腺濃度を経時的に比較することで変化をいち早くつかむことができ、乳がんの早期発見につながる可能性がある」(井上氏)。 

2018年に乳がんが見つかった患者。ヒートマップ画像を経年的に見ると、3年も前から変化が現れていた。今後、早期発見に役立てられる可能性がある(図:井上氏提供の画像を基にBeyond Healthが作成)

 なお、AI診断はエコーにも応用ができるという。下はマンモグラフィと同じ技術を用いてAIにエコー画像を学習させたもの。「悪性病変あり」の確率が90%以上なら赤く、良性なら青く光るようにプログラムしている。「今あるエコーにこのAI診断を組み込めば、もっと診断精度が上がる。技術的にはそれほど難しくないはず」と井上氏は言う。

しこりが検出された場合、悪性は赤く、良性は青く、色分けして示される。エコーの場合、AIの自動判定の感度は95.7%、特異度は97.9%だった(図:井上氏提供の画像を基にBeyond Healthが作成)