光免疫療法の優越性とメカニズムは…

光免疫療法(PIT)の優越性は。

米国国立衛生研究所・米国国立がん研究所の小林久隆氏。手にしているのはRM-1929ではないが、ある抗体にIR700を結合させた抗体複合体(画像提供:小林氏)

小林 RM-1929などのPIT治療薬は、抗体とIR700という物質を分子同士で結合したもので「抗体複合体」と呼ばれます。抗体ががん細胞の表面にある受容体というタンパク質に結合している時、かつ特定波長の光(RM-1929では690nmのレーザー光)を当てた時だけ、細胞を壊す「細胞傷害性」を発揮します。がん細胞に結合していない治療薬の分子に細胞破壊性はなく、PIT治療薬が結合してない周辺の正常な細胞にレーザー光が当たっても細胞破壊は起きません。

PIT治療薬ががん細胞を破壊するメカニズムを教えてください。

小林 抗体複合体にレーザー光が当たると、水溶性だった分子が脂溶性に変わるほか、分子の形状が大きく変化します。これらの変化により、抗体複合体が結合しているがん細胞の細胞膜が壊れて周囲の水分が急速に流れ込み、がん細胞は膨張・破裂します。興味深いのは、ほぼすべての生理現象が停止する摂氏4度でも細胞破壊が起こることで、これは、PITによる細胞破壊が、何らかの物理的な現象であることの大きな証拠だと考えています。

PIT療法は、がんが転移してしまった場合にも有効ですか。

小林 PIT療法はがん細胞を物理的に破壊するため、がん細胞に特有のたんぱく質が性質を保ったまま流れ出します。その結果、破壊されたがん細胞に対する強い攻撃力を持った免疫細胞を作り出すことが可能です。これが、この治療法に「免疫」という言葉が入っている理由の1つです。しかし、身体には、自分の体の細胞に対する免疫を抑える機能があり、がん細胞もこの機能をうまく利用していますので、PIT療法でがん細胞を破壊しただけでは、転移がんへの攻撃が起こりにくいことが分かっています。