「これが正解です」と口に出すことも、指差すことも必要ない

 武田氏とJVCケンウッドの共同研究で生まれた認知機能評価システムは、検査する側とされる側の間にモニターが介在する。検査される人は、このモニターに映し出される映像・画像を基本的には「見るだけ」だ(図1)。

図1●視線検出技術を利用した簡易認知機能評価法(出所:武田氏)

 これは、JVCケンウッドの視線計測装置「Gazefinder」のシステムを応用したものだという。「被験者の目の動きを正確に捉えることができるカメラで、モニター上のどこを見ているかを検出する。被験者にモニターで画像を見せ、その人がどこをどれだけの時間見ていたのかを正確に計測し定量化することができるのです」(武田氏)

 こうした技術を前提に、例えば次のような図形を被験者に見てもらう。2つの五角形が重なったこの図形。右の3つの中から同じものを選んで「見るだけ」だ(図2)。「これが正解です」と口に出すことも、指差すことも必要ない。

図2●被験者がどこをどれだけ見ているかがマーキングされる(出所:武田氏の講演のスライド)

 健常者であれば似たような図形の、似ている部分とそうでない部分を見つめ、やがて同じ図形を選び出し、同じ図形であることのポイントとなる部分を注視する。

 一方認知症を患っている場合であればポイントは定まらず、視線は画面の上をさまようことになる。顕著にあらわしているのが図3だ。

図3●左は視点が拡散、右はポイントを注視(出所:武田氏)

 丸と三角が触れ合った図を見せ、別の画面の4つの図形から同じものを選んで「見て」もらうという検査だ。

 健常高齢者は、正解図形を見る段階からポイントとなる部分を注視しているが、アルツハイマーを患う方の視線は図全体に拡散されているのが分かる。

 そして次の画面(図4)から正解を見つめてもらうのだが、視線を示すマーカーの分布の観察だけでその違いは瞭然だ。

図4●右は効率的に正解にたどり着いている(出所:武田氏)

 「健常高齢者の方はポイントとなるところを集中的に、認知症を患っている方は正解がわからずランダムに。健常高齢者の注視率81% 認知症患者の方は23%。このように、モニターの前に座っていただいて、2分50秒の中で様々な画像を見ていただきます。それぞれに正解画像があり、見ている視点プロットを計測、定量化することで認知機能のスコア化をするわけです」(武田氏)