「健康経営」が叫ばれて久しい。業績を常に問われる経営者としては、「結局、その投資対効果はどれほどなのか」が気になるところである(関連記事:「質」が問われ始めた健康経営)。

そんな中、ヘルスケアベンチャーのFiNC Technologiesはこのほど、2016年の提供開始以来、270社にサービスを提供してきた企業向けサービス「FiNC for BUSINESS」において、健康改善による経済効果分析の機能を強化した。従業員のプレゼンティーイズム(職場にいるが生産性が低い状態)などによる損失額を算出することで、従業員に対する健康増進策への取り組みを促そうというのが狙いである。健康経営に対する実態と展望を含め、同社 ウェルネス事業本部ウェルネス経営事業部長の長田直記氏に聞いた。

Finc Technologies ウェルネス事業本部ウェルネス経営事業部長の長田直記氏(撮影:筆者)

心身に目立った不調がなくてリラックスした状態だと、仕事に集中して取り組めます。そこから考えると、生産性や競争力を上げたい企業にとって「健康経営」は非常に重要なテーマと言えるでしょう。ただ、実際には投資対効果が分かりにくいため、投資に二の足を踏む経営者も多いと聞きます。

長田 私たちは企業に対して「健康経営優良法人(ホワイト500)」の取得も支援していますが、産業界全体で見渡すと、健康経営の取り組みを具体的に進める企業はまだ少数派です。この21世紀に入ってイノベーションが叫ばれている中、20世紀的な設備投資の考え方が強く残っているためではないかと見ています。

 20世紀に中心的な役割を果たした製造業では、設備が利益の源泉となります。そのため経営者は当然のごとく、設備に投資し、メンテナンスにもお金をかけます。

 一方、21世紀に入って産業全体がソフト・サービス化し、従業員が生み出すアイデアが利益の源泉となった今、“設備”はまさに社員です。社員という“設備”のメンテナンスに当たるのは健康増進策です。となると、人材と健康にお金をかけるのは企業にとって理にかなっているはずです。

 肉体と精神面の健康について挙げますと、肩こりは抑うつとの関連性があるという調査結果があります。また精神面の健康と働きがいについては、健康経営に関する研究を手がけている島津明人先生(慶応義塾大学総合政策学部教授)が「メンタル」と「ワーク・エンゲージメント」、つまり精神的な健康度合いと職場で生き生きと働けるかどうかは相関性が強いとおっしゃっています。

 FiNCではこうした研究成果も踏まえて、企業は従業員の精神面の健康である「メンタル」、「会社が好き・仕事が楽しい」という感覚を指す「エンゲージメント」、そして肉体の健康である「フィジカル」の合計3要素を総合的に上げていくべきと考えています。フィジカル、メンタル、エンゲージメントという3要素を一体的に高めていく「ウェルネスな環境」を企業内に用意することで、従業員満足度が上がり、その結果顧客満足度が上がり、企業の業績向上にもつながるというのが我々の提案です。