プライバシーを確保し、ストレスを感じさせない

 凸版印刷がこのサービスで重視しているのは、居住者にセンサーの存在を感じさせず、監視によるストレスを与えない仕組みだ。

 各センサーは、日常生活の中で自動的に居住者の行動情報を収集する。能動的な記録や、行動の制限などはなく、電池交換などメンテナンスの負担も前述の通り不要だ。

 センサーは基本的に、居住者が特定の場所に「居るか」「居ないか」「どれくらい滞在しているか」といった情報以上のものは認識しない。カメラなどによる監視と異なり、ある程度以上のプライバシーが確保されるため、脱衣所やトイレなどの見守りにも有効だ。

 また、このプロジェクトでは、居住者の住所、氏名といった情報とバイタルデータや行動記録などの情報がひも付けされないよう、データベースそのものを分けて管理している。さらに、そこにアクセスできる管理者も限定するなど、個人情報に関しても慎重な取扱いを心がけている。

 このようにして収集した行動データは、凸版印刷が分析し訪問介護者に報告する。

 例えば、「手洗いの回数」「入浴の回数」「日中の活動量」などは、これまで利用者にヒアリングで確認していた。このシステムを利用することで、訪問介護者はヒアリングなしでも利用者の状態を把握した上で、適切なアドバイスができるようになる。

行動履歴データを活用した日中の見守りイメージ。手洗いの回数、入浴の回数、日中の行動量など、ケアマネジャーや介護スタッフが知りたい情報を把握できる(出所:凸版印刷)

 訪問介護者が訪問できない夜間については、主に睡眠の質を分析して、訪問介護者に伝える。例えば、浅い眠りの日は、「何か不安や心配事があり、ぐっすり眠れていないのではないか」と尋ねるよう促すなど、居住者のライフスタイルにあわせた訪問介護を行えるようサポートする。

 本プロジェクトは現在、戸建て1棟、賃貸アパート9世帯の計10世帯でサービスを提供中だ。

 2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、デイサービス(通所介護)に通えなくなったサービス利用者の睡眠時間が、これまでより短くなる事例が確認された。この件は、凸版印刷からデイサービスのケアマネジャーに報告された。対応・対策については現在、検討中だという。

 睡眠の質を計測する本サービスがなければ知られることがなかった情報であり、介護分野における本サービスの有用性が実証された格好だ。

 データの活用方法について凸版印刷は、「今後も居住者やその家族、訪問介護事業者などを交え、データを元に意見交換をしながら適切なケアプランを探っていく」としている。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)