各地で緊急事態宣言が繰り返される中、飲食店での飲酒ができなくなり、家飲み需要が高まっている。酔っ払って帰路につく面倒や心配がない分、ついつい酒量が過ぎることも……。昔から“百薬の長”といわれるアルコールだが、飲みすぎると体にさまざまな害を及ぼす。近年のゲノム医療の発展により、遺伝子解析でアルコールにかかわる遺伝子型から、その人がなりやすい病気もわかるようになってきた。

つい最近も、アルコールに強い遺伝子型を持つ日本人男性は糖尿病にかかるリスクが高まることが突き止められた。アルコールに強い体質だからと飲み過ぎてしまわないように、気をつけなくてはならない。研究に取り組んだ順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学 スポーツ医学・スポートロジーの田村好史先任准教授に、アルコールと糖尿病の発症リスクの関連性について、最新の情報を聞いた。

田村先任准教授(写真提供:田村氏)

「飲酒が血糖値を下げ、糖尿病になりにくい」は欧米人だけが該当?

 江戸時代の儒学者で医師でもあった貝原益軒は、その著書『養生訓』の中で“酒は百薬の長”であり適量の飲酒は健康維持につながることを説いている。科学が発展した現代においても世界中でアルコールと健康に関する研究が行われており、適量の飲酒が体によいことを示した疫学調査としてよく知られるのが英国のマーモット博士が1981年に発表した「飲酒と死亡率のJカーブ効果」だ。この調査では、毎日適量のお酒を飲んでいる人は、まったく飲まない人やときどき飲んでいる人に比べて心筋梗塞などの冠動脈疾患による死亡率が低い傾向にあることがわかった。

 「糖尿病についても、過去の研究において、ほどほどの飲酒は血糖値を下がりやすくするため、糖尿病になりにくいことが明らかにされています」と田村好史先任准教授は話す。「ただし、これは欧米人に当てはまるエビデンス。近年、日本人を含む東アジア人では、適量であっても飲酒は糖尿病を発症しやすくするということが指摘されているのです」

 田村氏によると、そもそも日本人(モンゴロイド)と欧米人(白人)ではアルコール代謝にかかわる代謝酵素の遺伝子型が異なり、お酒に対する強さや飲酒の影響を受けやすい病気も変わってくるそうだ。この人種差を知る前に、まずアルコールが代謝される仕組みを押さえておこう。