遺伝子型によって「飲酒の影響を受けやすい病気」が異なる

 私たちが普段飲んでいるアルコールは「エタノール」と呼ばれ、胃や腸から吸収されて肝臓に届くと、「1B型アルコール脱水素酵素」(ADH1B)などの働きで「アセトアルデヒド」に分解され、さらに「2型アルデヒド脱水素酵素」(ALDH2)などの働きで「酢酸」に分解。最終的には「二酸化炭素」と「水」に分解されて体外に排出される(図1)。

図1●アルコール代謝の仕組み(資料提供:田村氏)
図1●アルコール代謝の仕組み(資料提供:田村氏)
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 お酒を飲んで気分がよくなるのは血液中のエタノール濃度が上がってくるからで、エタノールが分解されにくい体質(遺伝子型)の人ほど気持ちよく酔える一方、分解されやすい体質の場合は酔いが回らない。一方、有害物質であるアセトアルデヒドが分解されやすい体質だと二日酔いになりにくく、分解されにくい体質だと顔がすぐに赤くなったり、気持ちが悪くなったり、頭痛を引き起こしたりする。

 「白人の90%以上は、エタノールが分解されにくく、アセトアルデヒドが分解されやすい体質で、気持ちよく酔えて、二日酔いになりにくい人がほとんど、と言い換えられます。遺伝子型でいえばADH1Bが低活性型で、ALDH2が活性型です。これに対しモンゴロイドである日本人はADH1Bが低活性型の人は全体の5%ほどしかおらず、高活性型が60%程度を占めています。また、ALDH2では活性型の人と低活性型あるいは非活性型の人が約半数ずついます」と田村氏(図2)。ざっくりいうと、日本人は酔いにくく、二日酔いになりやすいタイプが多い。そして、白人のほうがモンゴロイドよりもお酒に強い遺伝子型を持っているというわけだ。

 「気持ちよく酔えて二日酔いにもなりにくい白人は、体質的にアルコールに依存しやすく、実際にアルコール依存症になるリスクが高いことがわかっている」と田村氏。一方、モンゴロイドでは、アルコールにより、後述する糖尿病に加え、食道がんや咽頭がんの罹患リスクが高まる。田村氏によると、飲酒ですぐに顔が赤くなるタイプは、飲めば飲むほどこの2つのがんのリスクが上昇するため、注意が必要だという。

図2●アルコールに関する遺伝子型による病気のなりやすさ(田村氏提供の資料を基にBeyond Healthが作成。表中データの出典はAlcohol Res Health.:30(1),22-27,2007)
図2●アルコールに関する遺伝子型による病気のなりやすさ(田村氏提供の資料を基にBeyond Healthが作成。表中データの出典はAlcohol Res Health.:30(1),22-27,2007)
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