お酒に強い男性が糖尿病になりやすいメカニズムが明らかに

 世界的に権威のある科学雑誌『Nature』に発表された論文(2020年)によると、東アジア人43万3540人のGWAS(ゲノムワイド関連解析)を行ったところ、ALDH2遺伝子多型が男性の2型糖尿病の疾患感受性遺伝子として新たに同定されたというのだ。「つまり、アルコールに強い遺伝子型(ALDH2活性型)を持つモンゴロイドの男性は、糖尿病になりやすいことが明らかになった。しかし、そのメカニズムは不明でした」(田村氏)。

 そこで、このメカニズムを明らかにするために、田村氏らの研究グループは日本人男性94人を対象にアルコールに強い遺伝子型(ALDH2活性型)と、それ以外の遺伝子型(ALDH2低活性型・非活性型)の2つのグループに分け、インスリン感受性や代謝における各パラメーターとの関連性を調べて比較した。その結果、アルコールに強い遺伝子型を持つグループでは、肝臓のインスリン抵抗性があり、グルコースクリアランス(糖が体内を循環して代謝されるスピード)も低く、空腹時血糖値が高いことが示された(図4)。

 「一般にはあまり知られていないことですが、肝臓は糖の貯蔵タンクでもあるため、肝臓でのインスリンの効きが悪くなると、貯蔵されている糖が全身にばらまかれて血糖値が上がるのです。特に空腹時血糖値を上昇させます」(田村氏)。

 さらに、飲酒量との関係について調べてみると、飲酒量が多い人ほど糖尿病のリスク因子が高まることもわかった(図5)。アルコールに強い遺伝子型を持つグループを飲酒量が1日30g未満(ビールに換算すると600ml)と30g以上に分けて比較してみると、30g未満の人は30g以上の人に比べて空腹時血糖値が低く、肝臓のインスリン抵抗性も比較的良好だったからだ。

図4●アルコールに関する遺伝子型とインスリン感受性・代謝などの関連性(資料提供:田村氏)
図4●アルコールに関する遺伝子型とインスリン感受性・代謝などの関連性(資料提供:田村氏)
[画像のクリックで別ページへ]
図5●アルコールに強い遺伝子型の人で糖尿病発症リスクが高くなるメカニズム(仮説)
図5●アルコールに強い遺伝子型の人で糖尿病発症リスクが高くなるメカニズム(仮説)
[画像のクリックで別ページへ]

 また、田村氏らの別の研究では、平均空腹時血糖値105.5㎎/dlで、1日平均32.1g、週5~6回の飲酒習慣のある男性のグループに1週間禁酒をしてもらったところ、肝臓のインスリン抵抗性が改善し、空腹時血糖値も98.2 ㎎/dlまで低下したという。この研究は、今現在、飲酒量が多く血糖値が高い人でも、禁酒すれば短期間で血糖値を改善し、糖尿病の発症リスクを低下させ得る可能性を示している。

 「糖尿病の発症予防の観点からいっても、アルコールに強いからといって安心してたくさん飲んでいいわけではなく、飲める人は飲酒量に気をつけることが重要なのです」と田村氏はアドバイスする。