ストレスから自傷や攻撃行動などの関連症状が出る

 ASD児では、強い不安や緊張などのストレスから易刺激性が一時的に強まることがある。

 ASD児の発達支援と治療にあたっている滋賀医科大学小児発達支援学部門特任准教授の阪上由子氏は、「ASD児は、言葉をやりとりしたり、気持ちを共有したりすることが苦手。また、同じ行動を繰り返し、変化を嫌い、特定の感覚にも過敏であるということなどから、ストレスを感じた時には火が付いたように泣いたり、頭突き、体のあちこちに噛みついたり、跡が残るくらい自分でほほを叩くなどの自傷行為や、攻撃性、興奮を示すイライラ行動が多くなる」と解説する。

 また、夜なかなか寝付かない、頻回に起きるといった睡眠障害も生じやすい。「治療の現場では毎日の子育てで疲弊している養育者の負担を軽減するためにも、ASD児の関連症状がなんとか改善すればと考えている」(阪上氏)。

図2●京都府立大学大学院生命環境科学研究科 井上亮氏
京都府立大学大学院農学研究科博士後期課程修了、農学博士。英国国立ローウェット研究所腸管免疫研究室などを経て現職。腸管機能(免疫)、腸内細菌叢を主な研究テーマとする(写真:本人提供)

 本人も家族も苦しむこれらASD児の易刺激性を、日常的な食というアプローチで軽減し、治療に寄与することができないか、と考えたのが、京都府立大学大学院生命環境科学研究科 動物機能学研究室講師の井上亮氏である。腸内に膨大な数で生息している腸内細菌叢や腸の免疫システムの研究者だ(図2)。

 「2010年以降、メタゲノム解析によって、自閉症児に特有の腸内細菌叢の乱れがあることが活発な話題になってきた」と話す井上氏は、2016年に阪上氏と最初の共同研究を行った。この研究によって、自閉症児の腸内細菌叢は定型発達児と異なっており、ブラウティア菌という腸内有用菌が少ないことなどを見いだした(※2)。

※2 Biosci Biotechnol Biochem.;80(12):2450-2458.2016