イライラ症状が減り、炎症性サイトカインが減少

 13人のASD児に、1日あたり6gの水溶性食物繊維をとってもらったところ、2カ月後に、1週間あたりの排便回数が平均で1.3回から2.8回と2倍に。自傷行為、他者への攻撃性、かんしゃくといった興奮性行動も減った。腸内細菌叢をみると、前回の研究において自閉症児で少ないことが確認されていたブラウティア菌が定型発達児に近づき増加(図4)、血液中の炎症性サイトカインも減少していた。

図4●水溶性食物繊維で有用菌が増えASD児のイライラ症状などが改善
自閉症スペクトラム障害の児童13人(平均年齢6歳)にグアー豆由来の水溶性食物繊維を1日当たり6g、食事に加えて与えた。2カ月後、排便回数が増加し、イライラなどの興奮性行動が改善、定型発達児と比べて少ないブラウティア菌も増加。血液中の炎症性サイトカイン「IL-1β」「IL-6」「TNF-α」が減少した(データ:J Clin Biochem Nutr.;64,3,:217-223, 2019)

 減少したサイトカインは、「IL-1β」、「IL-6」、「TNF-α」の3つ。「いずれも脳の炎症に関わることが報告されている炎症性サイトカインの代表格。調べた中で低下したのが、この3つだった。自閉症の人の血液中でもこれらのサイトカインが上がっていることが欧米の研究で報告されている」と井上氏は説明する。

 脳と腸が、自律神経やサイトカインを介して密接につながりあうという「脳腸相関(brain-gut interaction)」、「脳-腸-腸内細菌叢軸(brain-gut-microbiota axis)」というキーワードは、近年、医学界でも話題となっており、脳の機能の異常の一つでもあるASDも、腸との関わりが強いとする見方が強い。

 「脳の炎症は、自閉症はもちろん、うつ病やパーキンソン病など脳の機能障害の原因の一つとなる。腸の炎症を抑えることによって、自閉症児のイライラが抑えられたのではないか」(井上氏)。井上さんは、この研究成果を今年3月に開催された日本農芸化学会2019年度大会で発表し、「優秀発表・トピックス賞」を受賞した。