「食事」で腸から、脳の「医」の問題の解決に挑戦

 今回得られた結果について、医師である阪上氏は、「ASD児の攻撃性や興奮、自傷行為の一因である、慢性便秘による生理的不快感が改善することによって易刺激性が軽減したのでは、ととらえている。因果関係を突き止めるには、脳内の炎症に腸内細菌叢が関わっている、というさらに踏み込んだ証拠も必要となる」と話す。

 また、今後への期待として、「易刺激性という随伴症状に早期に介入することで、ASD児の生活の質の改善、ひいては中核症状の予後を改善することにつながれば」と阪上氏は話す。

 ASD児の腸内細菌叢を変えることと、さまざまな易刺激性改善のメカニズムを突き止めるには、研究規模を拡大する必要がある。しかし、「クリニックや総合病院の医療者には強い関心を示していただくものの、試験の管理やサンプル、アンケート回収を行う人手が足りず、頓挫している。研究の精度を高めるには、プラセボ(偽薬)を設定したRCT試験を行いたいが、保護者の方の気持ちを考えるとプラセボを設定しにくいという課題もある。ASD児の腸内環境改善への道筋は見えてきた。将来的により多くのASD児に試してもらい、本人や家族、教育現場のQOL改善につなげたい。そのためにも中規模、大規模の調査を行っていただける協力機関を現在探している」と、井上氏は研究への熱意を語る。

 私たちの腸に、どのような腸内細菌がどのように生息しているかが生活習慣病や免疫などの健康に密接に関わることがわかってきた今、発達障害にともなう症状改善にも「腸からのアプローチ」という新たな活路が見いだされそうだ。

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