食品メーカーが貢献できることがたくさんある

食品メーカーとして、どうかかわる考えでしょうか。

河野氏 根底には、病気になりにくい体を作る観点から、食品メーカーが貢献できることがたくさんあるのではないかとの思いがあります。マイクロRNAの発現量の差が、がんに影響を及ぼすことが明らかになりつつある中、マイクロRNAが体調のバロメーターとして機能するという仮説をもとにマイクロRNAの発現量を調節する食品素材を探してきたのです。既にこれまでの研究を通じて、いくつかの素材を発見しつつあります。

大塚氏 一般的には、玉ねぎに含まれるケルセチン、ウコンに含まれるクルクミンなどがマイクロRNAの発現に影響を与える天然化合物として知られています。ですから、日常の食生活からもマイクロRNAの発現量を改善できる余地はあると考えています。

河野氏 こうした“予防”に近い形でがんの発症リスクを抑制する研究を重ねてきましたが、改善できる食品の見通しが立ち始めたこともあり、2019年からは次の段階へとシフトしました。それが東京医科大学、横浜国立大学と共同でスタートしたNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトです。

どのようなプロジェクトですか。

河野氏 研究テーマは「生体データを用いて発がんリスクを説明できる“高信頼性進化的機械学習”の研究開発」。AIの基盤技術開発事業で、AIの実用化テーマとしてマイクロRNAによるがん未病状態判定を目指します。AI研究を主導するのは横浜国立大学の長尾智晴教授、落谷先生率いる東京医科大学が医学的見地からの信頼性評価、我々がデータの有効性検証と社会実装の検討といった役割分担です。同様のプロジェクトを2024年まで継続します。

NEDOプロジェクトにおける横浜国立大学、東京医科大学、キユーピーの役割(出所:キユーピー)

 血液中のマイクロRNAのバランスを測ることで、本当にがん発症前の段階を検知できるのか、または未病状態を判定できるのかが研究の中心となります。むろん、これは弊社だけでできるものではありません。そうした背景もあって連携しやすい国家プロジェクトで進めていきます。