改善策がセットではない未病判定は不安を与えるだけのものに

具体的な進め方は?

大塚氏 プロジェクトの研究では、体内、特に血液中のマイクロRNAを網羅的に測定する予定です。健康な人、がんに罹患した人、がんリスクが高いと判断できる人──こうした人たちの血液を測定し、その結果をAIで学習・分析します。最終的には、マイクロRNAのデータを入れればがんの未病状態が判定できるシステムを開発するのが目標です。

 今回のNEDOプロジェクトの目的が「説明できるAI」なので、少ないデータで良い結果が出せるAI開発にも注力します。現状ではAIの判定結果があっても、なぜAIがその結果を出したかの根拠を説明できず、ブラックボックスになることがほとんどです。横国大の長尾先生は判定結果の精度を維持しつつ、根拠を伝えることを得意としているため、まさに適任と言えます。

 この姿勢はキユーピーの事業にとっても重要な要素です。なぜなら我々が提供しようとしているのはがんの未病状態、これからがんになるリスクの判定だからです。「あなたはがんになるリスクが高い」と言われたとき、「マイクロRNAがこの数値だからリスクが高い」といった根拠とともに伝えることが肝になります。

 その結果、ターゲットを明確化でき、最終的には食品で改善することにつなげられます。改善策がセットではない未病判定は、不安を与えるだけのものになってしまいますから。

2020年7月に発表した、東京家政大学とのマイクロRNA測定装置に関する研究はどうつながるのでしょうか。

河野氏 我々が実際にがんの未病状態を判定するサービスを提供する場合、一般的な測定方法ではコスト面で現実的ではありません。そのため、ある程度安価で早期に測定できるキットを開発する必要があります。その測定装置を東京家政大学、自動車用アンテナメーカーのヨコオと協力しながら開発していきます。

大塚氏 この装置の特徴は、安価で非常にコンパクトな点。最終的にはノートパソコンほどの大きさを目指しています。

河野氏 我々が検体を提供して、NEDOプロジェクトではマイクロRNAを網羅的に解析し、東京家政大は独自の測定装置で測定し、データの連携を図るフローです。2023年末ごろから実証実験を開始し、NEDOプロジェクトが終了した2025年には本格的なサービス提供を目指したいですね。診断ではないので、薬機法の範囲外での展開になります。