まずは「触れる機会を増やす」

 ユニーズがまず、力点を置くミッションは、まさに吉成氏が言う「できる」という事実を知らせていくこと。病気や障害を持つ人たちを主な対象としたゲームやeスポーツ体験会を開催し、プレーに関する情報共有を進めていく。今夏、ユニーズの協力で八雲病院の患者と札幌市の就労支援施設「継続支援トラビズ」に通う障害者とのeスポーツの親善試合を開催済み。また、同じく札幌市の「就労支援施設ユニ・ノーマ」でもeスポーツの体験会を実施した。

八雲病院の患者と札幌市の就労支援施設「継続支援トラビズ」に通う障がい者とのeスポーツの親善試合の様子。©SEGA(写真提供:ユニバーサルeスポーツネットワーク)
「就労支援施設ユニ・ノーマ」におけるeスポーツの体験会の様子。この体験会で採用したゲームのタイトルは「ストリートファイターV チャンピオンエディション」。©CAPCOM U.S.A., INC. 2016, 2020 ALL RIGHTS RESERVED.(写真提供:ユニバーサルeスポーツネットワーク)

 病気や障害を持つ人、特に手が動かしにくい場合、本人は「素早く、複雑な動きを要するeスポーツで採用されるようなゲームタイトルはプレーできない」と諦めがちだという。しかし、これも各種のサポートによってプレーできるようになる可能性がある。「まずは体験会を通じて、できるという可能性について知っていただく」(田中氏)。

 家族を巻き込んだ体験会も企画していくという。周囲にいる家族やサポーターの理解や支援があれば、本人もeスポーツに取り組みやすくなるためだ。田中氏は「患者や障害を持つ当事者がゲームやeスポーツを通じて一度でも『自分にもできる』という体験を積めば、生活や人生に対する姿勢や考え方が大きく変わる。この変化は、支援する家族にも大きな希望になる」と語る。

 同時に、広くeスポーツ全般に対する知識の啓発も進めていく。ゲームおよびeスポーツのイベントや大会を開く場合、通例、ゲームメーカーへの確認と許諾を得る必要がある。それを知らずにイベントや大会を企画し気軽に宣伝しようとするケースも見受けられるという。ユニーズ専務理事の久保秀一氏は「こうしたガイドラインの順守は、プレーヤーが安心して参加するうえでとても重要だ」と強調する。

 ユニーズ理事兼事務局長の大海恵聖氏は「福祉分野はなにかと優遇される傾向があり、ごく小さなミスと言えるものであれば見逃される向きもある。だがそのままではeスポーツの普及を阻害しかねない。eスポーツとそれに対する正しい知識を普及させたい」と語る。「eスポーツの裾野が広がれば、障害を持つ人が参画する『ユニバーサルeスポーツ』の間口も確実に広がる」と話す。