先行する海外、日本はスタートラインにも至らず

 世界的な潮流としては、ゲームについてもコンピュータソフト一般と同じように、アクセシビリティ対応(年齢や障害の有無に関係なく利用可能にすること)が進む流れにある。

 英国にはSpecialEffect(スペシャル・エフェクト、https://www.specialeffect.org.uk/)という慈善団体がある。作業療法士が常駐しており、病気や障害を持つ人が健常者と同じようにプレーできるよう、個別対応しているという。

 米国では2010年にバラク・オバマ大統領(当時)がCVAA法(21世紀の通信と映像アクセシビリティ法)に署名している。ネットで配信されるコンテンツなど、今世紀に入ってから普及した新しいテクノロジーサービスやデバイスについて、アクセシティビティの確保や配慮を義務付けた法律だ。コンピュータゲームについては猶予期間を経て2019年から対象になった。

 こうしたアクセシティビティ重視の動きを受け、近年、専用ゲーム機や一部のゲームタイトルについてはソフトウエア側の機能として、ボタンのマッピング機能が実装されるようになった。指の力の個人差などに応じて、ボタンの機能の割り当てを変えることができる。

 ハード面での対応も徐々に進みつつある。2018年には米マイクロソフトがゲームのアクセシビリティを高めるための機器「Xbox Adaptive Controller」を販売開始した。

 一方、日本国内におけるゲーム業界の対応状況を見てみると、まだ足踏み状態のようだ。田中氏は「現場で患者に対応してきた感触から言えば、スタートラインにも立てていない状態」と指摘する。

 障害を持つ人がeスポーツの競技に参加する場合の課題は少なくない。例えばゲームの操作システムにまつわる規定だ。現状、eスポーツの大会では「ハードウエアメーカーが提供する純正のコントローラーを使う」「大会の主催者が指定するコントローラーを使う」といったルールが決められていることが通例だ。競技としての公平性を確保するためのことだが、これは身体的な制限を持つプレーヤーが選手として参加しようとした場合、障壁にもなり得る。

 eスポーツ関係者の間では、パラリンピックのように大会を分けるというアイデアも出ているという。だが田中氏はコンピュータゲームの特性を生かした柔軟な在り方を探るべきと話す。「手先さえ動かせればプレーできるし、健常者と障害者でチームを組んで参戦もできるというのがコンピュータゲームの良さ。大会でコントローラーのカスタマイズが可能な部門を設けるという方策もあり得る。障害者を区別するのが良いかどうかについては、議論が必要だ」(田中氏)。

 ユニーズ専務理事の久保氏は、「だからこそ、今は草の根の活動が大切。障害を持ちながらもeスポーツに積極的に参加する人が増えれば、eスポーツ関係者の間でも問題意識が高まるはず」と展望する。