ノウハウは他の領域でも生きる

 ユニーズが取り組むゲームおよびeスポーツの「ユニバーサル対応」は、どんなインパクトを与えるだろうか。田中氏は「近年、障害者雇用に注目が集まっている。障害者の働く環境の改善に応用できそうだ」と見通しを語る。先に触れたゲーム中の姿勢の改善、ユーザーインターフェースの工夫は「通常の事務作業にも通じる」(田中氏)という。

 健常者には普通の動作であっても、障害や病気を持つ人にとっては難しいということは数多く存在する。また、それらは高齢者が感じる難しさでもあり、ひいては健常者でも何となく面倒だと感じていながら我慢している点であることも少なくない。「病気や障害を持つ人々に向き合うことで、高齢者や一般の人にも使いやすい製品やサービスづくりにもつながるのではないか」と田中氏は意見を述べる。

 加えて田中氏は「病気や障害で長期に入院している子どもや若者たちにとって、ゲームで一般社会との接点が増えるというのはとても大きなインパクトだ」と語る。「八雲病院の患者たちは一様に、『ゲームを通じて一般社会とのつながりを持てた』ことを楽しそうに、興奮気味に語っている」(田中氏)。

 身体が動かなくなっていく、という現象は、何も病気を抱えた人々のものだけではない。若手の健常者も、年齢を重ねるごとに身体の自由度は少なくなる。我々が迎える運命を見た場合、時間の違いはあれども本質的な差異はない。

 しばしば、人は失ってはじめてその大切さを自覚すると言われる。また、持っていないからこそ持っていることの素晴らしさを認識するとも言われる。ユニバーサルeスポーツに挑戦する病気や障害を持つ人々の姿は、人生という限りがある時間軸の中で健常者も見据えるべきものを示唆している。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)