各国それぞれにある「医食同源」を思い出してもらう

グラハムさんはご自身で直接、医師に料理を教えていたそうですね。今まで、どのくらいの医師に料理を教えたのですか。

グラハム 今まで600人くらいの医師に教えました。みんな料理を好きになってくれましたね。

 医師はみんな、人のために貢献したいと思って医師になるのですが、どうしても15分などの限られた時間の中で対応するしかなく、不満がたまっています。そんな中、私の料理教室のプログラムには「従来の診療とは違う形で人の健康に貢献したい」という思いを持った医師たちが集まってきてくれて、毎回盛り上がりました。30人しか枠がないところに60人くらい応募が来たりしました。料理を学ぶ中で、医師たちは人に対する愛の気持ちを思い出したように見受けています。

キッチンでのグラハム氏(画像提供:ロバート・グラハム氏)

 色々な出身の医師が足を運んでくれたのですが、私はイタリアにはイタリアの、中国には中国の、米国には米国の、といった具合に、各地域の事情に合致した「医食同源」の考え方に基づくレシピを渡しました。実はそれぞれの地域に元々そういう考え方があるんです。私は各国の医師たちがそれらを思い出せるようにカスタマイズして渡しているわけです。

 日本では成人の肥満の人は全人口の約4%程度にとどまっており、米国に比べたら圧倒的に低い。これは日本の伝統食が「医食同源」に基づいているからだと思うのです。ですがその一方で、日本人の胴囲の数字を見ると年々上がってきています。私は、最近、行き過ぎた西欧化が日本人の健康を損ねていくのではないかと危惧しています。

 ただ、私は明るい側面も見出しました。今回私は「スマートキッチン・サミット・ジャパン」(主催:シグマクシス、2019年8月8~9日)で講演するために日本に来たのですが、ある日本人の聴講者の方に「ありがとう」と言われました。その人は「元々日本にもあった医食同源の大切さを、あなたがあらためて教えてくれた」とおっしゃいました。

子どもたちにもっと安全な食を提供すべき

教育機関や政府にも医食同源の考え方を啓発しているとか。

グラハム はい。以前、ニューヨーク市に対して子どもたちの給食を変えようと提言しました。今このプロジェクトは進行中です。最近はワシントン州にも行ってきました。

FRESH MEDICINEのホームページ(http://www.freshmednyc.com/

 親たちは、生まれてから就学時までの小さい自分の子供に対して、栄養にも原材料にもこだわり、良い品質の食事を与えて育てます。でも学校に入学すると、それらの配慮がまったく意味がないものになってしまうんです。米国の学校給食は、とてもひどいものです。加工食品、白砂糖たっぷりの食事、健康的ではない加工乳などが平気で出されています。加工食品の摂取が長期に渡って増えると死亡率が高まるというデータがあります。また、今の米国の子どもたちは高コレステロール食によって親世代よりも寿命が短くなるという予測まであるほどです。

 そんな食事で子どもたちがまともに勉強できると思いますか? 子どもたちに白砂糖を与えすぎると騒ぎ出し、落ち着きがなくなります。そんな子どもたちを抑え込むために、薬を与えたりするケースもあります。おかしな話ですよね。

 食事は本当に大切で、まさに「医食同源」なのですが、特に子どもたちについては、それを強調しすぎることはありません。大人は選択できますけれども、学校に通っている子どもたちは選択できませんから。