最先端のジョブマッチング

 現在檜山氏が最も力を入れているのがジョブマッチングの研究だ。

 「1960年代までの日本人の一生は、就労期の後、引退してから亡くなるまでの時間が相対的に短かった。リタイヤしてから介護が必要になるまでの健康な時期も短かったということです。平均寿命が伸びることで、今ではリタイヤ後の健康な時間が数十年長くなりました」(檜山氏)

 つまり、元気なシニアが増えたということだ。檜山氏はここに焦点を当てる。

 「『地域の元気高齢者を集める』という言葉の英訳『Gathering Brisk Elderly in the Region』の頭文字を取って『GBER(ジーバー)』とよぶシステムを構築しています」(檜山氏)

 2055年には1人の若者が1人の高齢者を支えなければならなくなる時代がくると言われている。現在の仕組みのままそうした社会を維持することができるだろうか。

 「65歳以上の8から9割の人は自立した生活ができる元気高齢者であることが分かっています。そうした人たちが活躍できる環境を情報通信技術で展開することができれば、社会をもういちど見つめ直すことができると思っています。高齢者に対する技術的なサポートといえば、ケアばかりにフォーカスしがちで、新しい人生の時間に対する取り組みがほとんどなされていないと言っていい。そこで研究を続けていくなかで生まれたのが、GBERなのです」(檜山氏)

 カテゴリーの領域として「ジョブマッチング」という言葉を使ってはいるが、マッチングするのは「仕事」ばかりではない。ボランティア、生涯学習など広い意味での社会参加活動を射程に置く。そうした社会参加をしたいと考えている「元気なシニア」をマッチングするプラットフォームがGBERなのだ。

 「高齢期になってくると心身のコンディションも個人差が大きくなります。だからそれぞれの状態にあった形での社会参加の促進を特に意識しています」(檜山氏)

 スマートフォンやタブレットのブラウザーからアプリにアクセスする。カレンダーを開いて、自分の時間の都合がつく日付をタッチするだけで、エントリー可能だ。午前、午後、一日中など、細かな情報を発信できると同時に、自身の生活圏内でどのような地域活動が募集されているのかを把握できる仕組みになっている。

GBERのスマホの画面(出所:東大 稲見・檜山研究室)