思い出の場所を写真でめぐる

 少しでもやる気を維持してもらおうと、登嶋氏は2014年ころから、「思い出の場所写真」の活動を始めた。デイサービスの利用者にヒヤリングをして、その人の「思い出の場所」の写真を取りに行くのだ。写真を見せて「懐かしい気持ち」になっていただき、モチベーションをアップするという試みだ。

 こうした地道なボランティア活動を続けると同時に、実は写真の限界も感じていたという。

 「『あー懐かしい』と感じていただき、『また行ってみたいな』との気持ちを引っ張り出す一定の効果はあるのですが、例えば『このお地蔵さんのお向かいに駄菓子屋さんがあったでしょ』なんて言われると、写真ではお手上げなんです。仕方ないからまたその場所を撮りに行く、という繰り返し(笑)」(登嶋氏)

 360度カメラであれが「全てを見たい」という利用者の気持ちに答えられる。そう考えた登嶋氏は2016年ころから、自腹で機材を用意し、お年寄りたちに「VR旅行」の醍醐味を味わってもらうようになった。

 「VR映像ですからゴーグルを付けると、前後左右上下、自分の向いた方向の景色を見ることができます。普段車椅子で生活している方でも、振り返るために思わず立ち上がるなど、その方の眠っていた能力を引き出す力は絶大です」(登嶋氏)

 そして2016年、東京大学、先端科学技術研究センター講師の檜山敦氏が主催する「日本バーチャルリアリティ学会」のセッションに参加したことで、大学における研究とのつながりができ、現在は学術支援専門職員として活動しているのだ。