入所のその日から「自立」を目指してオムツはずしと歩行の訓練に入る特別養護老人ホームがある。東京都渋谷区上原にある「杜の風・上原 特別養護老人ホーム正吉苑」だ。寝たきりで入所しても、数週間後には歩ける人が続出。施設1階にはジムと見紛うほどのリハビリ施設を完備。「身体」「社会」「精神」──これら3つの自立を目指すその取り組みを聞いた。

「杜の風・上原 特別養護老人ホーム正吉苑」(写真:末並 俊司、以下同)

 東京都渋谷区。東京メトロ千代田線の代々木上原駅から徒歩圏内。都会のど真ん中にある「杜の風・上原 特別養護老人ホーム正吉苑」(入居定員80人)は歩けるようになる特養として知られる。

 取り組みの特徴は「オムツをしない」ということに収斂する。入居の当日からオムツはずしのケアが始まり、概ね数週間で入居者のほぼ全ての方がオムツ生活から開放されるという。

 同施設を運営する正吉福祉会理事の齊藤貴也氏に聞いた。

 「私たちはとにかく『自立』に軸足をおいて全ての取り組みを行なっています。では自立とはそもそもなにか」

 齋藤氏は次のように説明してくれた。

正吉福祉会理事の齊藤貴也氏

 福祉分野における「自立」とは、自己決定に基づいて、主体的な生活を営むこと。障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加することである。そのためには身体的自立性の向上をきっかけにして精神的自立、社会的自立へと繋げる。

 身体的な自立が低下すると、いままでできていたことができなくなる。精神的な自立の低下は、寝たきりやオムツなどによる依存心がこれを増長する。また社会的自立の低下は要介護状態になることで孤立が深まるし、家族や社会に対する負担も増える。

 「『身体的自立』『精神的自立』『社会的自立』はそれぞれ独立しているのではなく、全てがつながっています。どれかひとつだけの解消を目指してケアするのではなく、3つの自立がそれぞれつながった形でケアすることが大切なのです」(齊藤氏)