オムツがはずれることで精神的な自立へとつながる

 身体的自立、精神的自立、社会的自立──。

 3つは相互につながっているとはいえ、高齢者の場合、多くは身体的な部分の低下がはじめに見られる。「分かりやすい現象としてはオムツへの依存ですね」と齊藤氏。

 「オムツがはずれることで、自信や生活の意欲が回復しその後、自己実現につながったり、精神的な自立へとつながる」(齊藤氏)

 都市部の特養は入居待機者が数十人、数百人単位で存在する施設が少なくない。どこも順番待ち状態ということだ。原則的に緊急度の高い順に入居が決まっていくので、都市部の特養の入居者は要介護4、5の方が多い。そのほとんどが入居時はオムツをつけている。

 「当施設では入居の当日からオムツをはずしてもらいます。おむつの中での排泄を続けていると、排泄の機能がどんどん低下してしまいます」(齋藤氏)

 今日は体調がいいからトイレにいこう、という気力がなくなるというのだ。

 「やがてオムツを交換するのも誰かにお願いしないとできないという生活になり、様々な意欲が低下していく。自立に向けての気持ちがどんどん低下するわけです。ここでは入所の日からオムツをはずして、その日からトイレに行くという生活を目指します」(齊藤氏)

 もちろんはじめのうちは失禁などの失敗もあるが、1~3週間のうちにほぼ全員が改善するという。

 「だから当施設ではいわゆる寝たままできるテープ式のオムツとか、紙パンツのようなものは開設当初から買っていない。普通のパンツと尿パットのたぐいで対処しています」(齊藤氏)