経営面でもプラス

 寝たきりで入居した方を、その状態のままケアする施設もある。一方、杜の風・上原は寝たきりの方のオムツをはずし、歩行練習をして元気にさせる。入居者本人にはもちろんいいことだが、施設としては手間がかかるばかりでメリットはないように感じる。

 「元気になってくれたほうが経営面でもプラスです。このようなケアは健康を増進し、入院が減りますからね。入居者が病院に入院している間は家賃相当分は入ってくるけど、介護保険サービス費は支払われません。ずっと元気で入院せずにここで暮らしてもらったほうが施設の経営は安定します」(齋藤氏)

 杜の風・上原では食事の面でも「自立支援」が徹底している。介護施設に入居する高齢者の多くは栄養不足気味だ。

 「当施設に入ってくる方々の8割くらいは当初、低栄養状態でした。刻み食やミキサー食の方も多い。でもそれだと食べる喜びを感じにくい。だから当施設では常食を目指します。つまり普通の食事にするということです。常食には食物繊維も多く含まれていますので、便失禁を改善する大きな要因のひとつといえます」(齋藤氏)

1階にあるジムでの風景
1階にあるジムでの風景
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 見守りや食事介助の手間は増えるが、常食を摂ることで食べることの喜びを取り戻し、これが認知症の予防や症状の軽減にもつながるのだ。

 「私達は常から『認知症の周辺症状を取り除くケア』を実践しています。認知症はあくまでも精神疾患です。精神疾患が治るということは問題行動などが消失することです。私たちは水分ケアや歩行ケアを中心にケアによって、周辺症状を取り除き、安心した生活を送ってもらうように支援を行っています」(齊藤氏)

 医療では到底叶えることのできない取り組みだ。

 歩ける、トイレに行ける、美味しく食べられる。人として当たり前の日常を取り戻すことで、たとえ認知症を患っていてもその人らしく生きることができる。施設入居から新しい人生が始まることもあるのだ。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)