開所からわずか3年余りで120強の企業・団体、約2200人が集積するまでに成長した神奈川県藤沢市の「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」(関連記事:あの創薬イノベーションハブ、3年間で急成長した背景とは)。創薬・バイオ関連で国内随一の研究開発施設として存在感を高めている湘南アイパークでジェネラルマネージャーを務める藤本利夫氏は、2021年8月26日に開催したメディア向けのオンライン発表会で「世界に開かれたエコシステムの形成」をテーマに講演し、日本のエコシステム成長に向けたポイントを提示した。

湘南アイパークの藤本利夫氏(オンライン発表会のキャプチャー)
湘南アイパークの藤本利夫氏(オンライン発表会のキャプチャー)
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 藤本氏はまず、低分子化合物からバイオ製剤へと進化してきた製薬産業の歴史を紐解きながら「現在は細胞治療、遺伝子治療、中分子医薬といった次世代治療が浸透しつつある」と指摘。およそ世界の20%ほどは次世代治療に特化したモダリティ(治療手段)が開発されているとした。

 従来の創薬とは異なり、次世代治療では中小のバイオテク、アカデミア、バイオベンチャーが創薬の主体になっている。藤本氏は「全世界で前臨床、臨床開発パイプラインをすべて並べてみると、約2万弱の中で大手製薬企業のパイプライン数は5.4%に過ぎない。残りの95%は中小のバイオテク企業であり、しかもその大半が自社の薬を1つも持っていない」と説明した。

変化を遂げた創薬主体を示すグラフ(オンライン発表会のキャプチャー)
変化を遂げた創薬主体を示すグラフ(オンライン発表会のキャプチャー)
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 では、大手製薬企業は何をしているのか。そこには、創薬エコシステムが深く関わっている。欧米を中心としたエコシステムには大企業らによる潤沢なリスクマネーが流入し、その資金を元にしたアカデミア派生のベンチャーが迅速に開発を進める背景がある。そしてあるステージに到達したら提携や買収などで成果を“刈り取る”分業体制が敷かれていると藤本氏は分析する。

 「強いエコシステムがある地域はボストン、ニューヨークなど米国東海岸、シリコンバレー、サンディエゴなど米国西海岸、上海、ロンドン、製薬産業が盛んなスイスなどがある。これらの地域には人材、技術、資金が集中し、さらにエコシステムが成長を遂げている。日本はベーシックサイエンスは優秀だが、有効な形で患者に届いていない。産官学の連携が進み、ベンチャーが生まれ、それを大手企業が引き継げる体制が確立されていないことが日本の製薬産業が活性化していない大きな要因だと見ている」(藤本氏)

日本のエコシステムの成長に必要な6要素とは

 日本の課題はそれだけではない。海外諸国と比べても研究論文や研究人材の成長が停滞し、ベンチャーキャピタル投資額の比較では、米国の約2.5%に過ぎない。疾患領域別の投資傾向を見ても、米国ではオンコロジー(がん領域)が中心だが、日本は年によってバラバラだという。「企業側が求めるものと、アカデミアが産業界に推す技術のマッチングができていない。つまり、資金が集まる領域の研究がされていないのではないか」(藤本氏)。

 これらを踏まえ、日本のエコシステムの成長には新規事業、資金、人材、ナレッジ、インフラ、政策の6要素がダイナミックに連動することが必要だとする。その上で、湘南アイパークのエコシステム醸成に向けた決意を次のように語った。

エコシステムの成長に欠かせない6要素(オンライン発表会のキャプチャー)
エコシステムの成長に欠かせない6要素(オンライン発表会のキャプチャー)
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 「これらを実現するために、湘南アイパークでは産官学のさまざまなプレーヤーが知恵を持ち寄り、積極的なコミュニケーションを図りながら解決策を導き出している。ここから新規事業が次々に生まれ、世界につながるエコシステムを形成していきたい」(藤本氏)

(タイトル部のImage:剣持 悠大)