医療・福祉分野において、患者の状態を表す指標の1つに「QOL」(Quality of life)がある。「生活の質」「人生の質」と訳され、ADL(Activities of Daily Living)との対比で使われることが多いが、実際にはさまざまな考え方があり、定義は多様なのだという。そのため、QOLの向上を目指すアプローチもさまざまだ。術後の回復が早いとされる手術支援ロボットの開発、季節の材料を使って五感を刺激し充足感を高める食事、リラクゼーションを目的としたエステなど、幅広い領域でQOLの改善に向けた試みがなされている。そんな中、「総合毛髪関連企業」の看板を掲げるアデランスが取り組むのは、毛髪関連の知見に基づいて開発・製造した「医療用ウィッグ」(かつら)の活用によるQOL向上だ。

アデランスの医療用ウィッグ「ラフラ」。脱毛によって頭囲が小さくなっても対応できるように、土台となるネットには伸縮性のある材料を使っている(写真:川島 彩水、以下同)

医療現場での評価が進むウィッグ

 その活動が始まったのは1978年。病気やケガによる脱毛で悩む小・中学生を対象にウィッグを無償提供する「愛のチャリティーキャンペーン」を開始した同社は今も、年間に約300人の子どもたちをサポートし続けている。

 その他にも同社は、NPO法人のJHD&C(ジャーダック)の活動に参画し、寄付された髪からウィッグを製作している。さらに、脱毛に関する相談への対応やウィッグの提供・アフターケア、理美容サービスを行うヘアサロンを病院内で開設。現在は全国31カ所でヘアサロンを展開する。

 「今、がん患者への外見支援に力を入れている病院が増えています」と話すのは、同社医療事業推進部長の大里修治氏。

アデランス 医療事業推進部長の大里修治氏

 「その中でウィッグを治療の中で採用するという動きも活発になっているのです。実際、医療現場からは『治療に伴って自分の髪の毛がなくなるという恐怖をウィッグが和らげられる』『治療にも前向きに臨める』という患者案の言葉をいただいています」

 日本皮膚科学会の「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、「かつらの使用」を「推奨度:B」すなわち「行うよう勧める」と位置づけるなど、医療現場での評価も確立されつつある

* 同ガイドラインでは、ウィッグの使用によるQOLの改善について「十分な統計学的検討はされておらず、改善が有意であるかどうかは不明」としながら、福祉用具心理評価スケール(PIADS)を用いた症例集積研究では「PIADS 平均、効力感、積極的適応性、自尊感の 3 因子はともにベースラインに比べて有意に増加し、かつら装着時の見た目への満足度を評価したVASスケールと正に相関した」として、エビデンスレベルは低いものの、ウィッグは「 QOL を改善させる効果がある」と記載する。推奨度:Bには他に、ステロイド局所注射療法(小児を除く)や局所免疫療法、ストロイド外用療法が挙げられている。