iPS細胞由来運動ニューロンでALS治療薬候補を同定

 岡野氏らは、iPS細胞に種々の分化誘導因子を加えて培養することで運動ニューロンに分化した細胞を作製(図1)。この患者由来の運動ニューロンを用いて、既存薬をスクリーニングしたところ、ドパミンD2受容体系作動薬のロピニロールをALS治療薬候補に同定した。運動ニューロンの神経細胞死の抑制が認められており、病態の改善が期待できるという。

図1●iPS 細胞創薬 (出所:慶應義塾大学医学部・慶應義塾大学病院・AMEDによる2018年12月3日付プレスリリース)

 ロピニロールは1996年から、やはり神経変性疾患であるパーキンソン病の治療のために世界中で用いられている。このように既存薬を別の疾患にも適用する手法はドラッグ・リポジションニング(DR)と呼ばれ、使用実績がある薬であれば、未知の副作用などは少なく、安全性が高いとされる。

 慶應義塾大学病院で実施されている医師主導治験は、無作為化比較対象試験で20例(実薬15例、偽薬5例)を対象にする。既に被験者の登録は完了しており、投与後一定期間経過観察して安全性と有効性を見極める。

 岡野氏らはこれに先立ち、遺伝性難聴の「ペンドレッド症候群」に対しても、免疫抑制薬のラパマイシンに内耳の細胞死を抑える効果を発見しており、2018年に医師主導治験を開始している。

 こうした疾患特異的iPS細胞を使った創薬の治験は、2017年に京都大学が骨の難病である進行性骨化性線維異形成症(FOP)を対象として開始したのが先駆けである。国内で3つ実施されているiPS創薬の治験のうち、ケイファーマは、3例目に関わる。しかも、ALSやペンドレッド症候群では、ヒト由来の細胞を用いて薬効を確認したという経緯から、動物実験を経ないで治験へと進んでいる。並行して、これらの治験薬について、導出候補先となる製薬会社との検討も進めている。