新薬を市場に出すためには、その薬が有効で安全なものかどうかを調べる治験が必要だ。治験によって有効なデータが必要量集まらないと承認が得られない。ただし、治験に参加してもらう患者が見つかっても、有効なデータが得られるとは限らない。飲み忘れなどによって、途中で脱落してしまうこともあるからだ。この飲み忘れを防止する機能などを備えたアプリを提供するベンチャー企業が現れた。

 治験情報サービスを手掛けるベンチャー企業のBuzzreachは、治験に参加している患者に服薬のタイミングを通知で知らせるなど、治験期間のサポートをするアプリ「ミライク・スタディ・コンシェルジュ(MiiLike Study Concierge)」を開発した。同アプリを患者が使用すれば、治験コーディネーター(CRC)の業務負荷を軽減できる。

「ミライク・スタディ・コンシェルジュ(MiiLike Study Concierge)」の画面例(出所:Buzzreach)

 同アプリを開発するに至った背景には、治験に参加した患者の脱落が非常に多いという実態がある。新薬を市場に出すためには、開発の時に患者に治験に参加してもらったうえで、そこから得られた有効なデータを厚生労働省に提出して承認を得る必要がある。しかし、治験に参加した患者の4人に1人が途中で脱落してしまっているのが現状。このため、多額の開発費をかけて医薬品を開発したとしても、治験の際に有効なデータを必要量集めることができず、なかなか承認に至らなかったり、治験そのものが中止になったりすることがある。

 同アプリは、患者が自分のスマホにダウンロードして使用するもの。アプリは、ウエブアプリとして、患者に提供する。様々な機能がある中で、最も効果的なのは「プッシュ通知」機能。服薬、来院などの予定はカレンダーに登録できるようになっており、その登録された時間に応じて通知を行う。患者は、通知にしたがって服薬すればよいので、飲み忘れることも飲みすぎることもなくなるわけだ。治験から脱落する理由の多くは、服薬を続けられなかったことによるものなので、通知の機能は非常に重要だ。

服薬支援以外の機能も

 CRCの業務をサポートする機能も充実している。CRCとは、治験を参加する患者が円滑に治験を進められるようにサポートする専門スタッフを指す。患者が安心して治験を進められるように、患者の生活や病気の状態など全体を考えたうえで、適宜分かりやすく伝えるスキルを備えていなくてはならない。

 このようにCRCは高度な知識を備えていなければならないにも関わらず、看護師などに比べてまだまだ認知度や評価が低いというのが実態。このため、CRCになりたがる人が少なくなっており、このままだとさらに治験データが集まりにくくなってしまう危険がある。

 同アプリでは、前述したようにこれまではCRCが主にサポートしていた薬の服用タイミングなどをアプリが管理してくれる。また、CRCから患者に向けて発信が可能なメッセージ機能も搭載。CRCからのメッセージは、やはり通知で知らされるので、患者に対して必要に応じてメッセージでサポートできる。

 アプリはこのほかにも、CRCをはじめ製薬企業の社員やメディカルスタッフが患者向けに書き込む「掲示板」機能、治験参加カードなど患者向けの資料をPDFで保管する「ライブラリ」機能、疾患情報に関連した服薬情報を掲載した「服薬ガイド」機能などを備えている。治験に関する情報を、ワンストップで提供できるわけだ。価格は製薬企業の治験1プロジェクトあたり、月額で20万円から。

製薬会社と患者を結ぶプラットフォームを提供

 Buzzreachは、「治験のサポート」に力を入れているベンチャー企業だ。今回のアプリの提供に先だって、ことし3月には治験情報発信プラットフォーム「puzz(パズ)」の提供を開始している。puzzは、製薬企業や医療機関が治験情報を掲載し、患者などに向けて情報発信ができるプラットフォームである。

 同プラットフォームを開発したのは、やはり新薬の開発期間をできるだけ短くしたいという思いからだ。前述したように、新薬の承認を得るためには、治験において一定量の有効データが必要となるが、そもそも治験を行う患者が見つからなければ、治験が始まらない。従来、主には医療機関が治験に参加してもらう患者をリクルーティングしていたために、必要な数が集まらず、治験の期間を延長せざるを得ないことが多くあった。

 そこでBuzzreachは、製薬企業が治験情報を発信できるpuzzと、それに加えて患者と臨床試験実施医療機関を繋ぐメディア「smt」を開発した。smtは、新しい治療法を必要とする患者に対して治験のマッチングサービスを提供するもの。患者や家族が症状に合った治験を検索して応募ができる。

「puzz」と「smt」の連携(出所:Buzzreach)

 製薬企業がpuzzに治験情報を登録すると、その情報はsmtにも同時に反映される。患者が、もしsmtに登録された治験情報の中から、受けてみたいものが見つかれば、それに応募する。条件が合えば実際に治験が始まるという仕組みだ。

 現在、日本において製薬会社の治験プロジェクトは700以上あるといわれている。製薬会社がしのぎを削って新薬の開発を進めているが、承認を得るまでには10年以上かかるのが当たり前だ。この期間をできる限り短くし、患者により有効な新薬を提供するべく、Buzzreachは今後も治験情報の拡散に力を入れていくという。

(タイトル部のImage:Buzzreach)