引きこもりや認知症、発達障害にも応用可能

 統合失調症に対する治療的介入として開発されたODだが、他にも応用できるのだろうか。斎藤さんは30年間、ひきこもり支援にも取り組んできたが、「結論から言うと、ひきこもり事例の対応にODは非常に向いています」と言う。引きこもり支援の重要なポイントは、家族支援。家族を巻き込む、本人の状態を無理に変えようとしないというODの特徴が、上手くフィットするのだという。

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『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』(医学書院)より。引きこもりと家庭内暴力のあった人がODを経て引きこもり支援活動を始めるようになる(出所)同書22~23ページ(医学書院)まんが/水谷 緑
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 さらに、うつ、双極性障害、認知症のBPSD(行動・心理症状=妄想、意欲低下、暴言、徘徊など)の改善をもたらしたという症例もあるという。また、発達障害(自閉症スペクトラム)では「それまで問いに答えるだけで発語が乏しかった患者が、ODのセッションを重ねるうちに、本人から自分の言葉で、抱えている悩みや生きづらさを話してくれるようになりました」。

 このように幅広い活用の可能性があるのは、「自分だって話していいし、話したいんだという形で、患者の主体性が取り戻されるからではないでしょうか」と斎藤教授は言う。ODを受けた患者からもっともよく聞かれる言葉は「安心した」という言葉だそうだ。

 話を統合失調症の例に戻そう。

 幻聴や妄想を持っている人は第1に「聞いてもらいたい」と思っている、と斎藤教授は言う。周囲に話すと、それは思い込みだと否定されたり、説得されたり、証拠を出せと言われたりする。当人にとって、否定されることは自分を丸ごと否定されることに近く、否定されるほど妄想にしがみつくようになるという。

 「ODで初めて、自分の主観的な経験に強い興味と関心を向けてもらえた。否定もされず、『もっと聞かせて』と言われる経験がもたらす安心感はとても大きい、と当事者からしばしば聞きます。彼らは語るそばから否定されてきているので、聞きたがってくれることに安心感を感じる。自分に興味を持たれることは何よりの肯定感となり、回復が起こっていくのです」

 また、症状が大きく現れる「急性期」は、「窓が開かれている状態」とODの開発者である心理療法士のヤーコ・セイックラは述べている。「急性期は、心のバリアが外れて本質的なものがむきだしになっている。そういうときにODで介入をすると、語りにくいようなことも語られてしまい、一気に解決が進むことがあります。これまで妄想は脳内の異常だと固く信じられてきましたが、時には意外なほどあっさり消えてしまうこともある、ということを経験しています」

 幻聴や妄想を否定しないのは第一歩で、斎藤教授はさらに「幻聴や妄想にともなう感情を共有すること」が重要と考える。「妄想の背景には強い怒りやいらだちなどの感情があることが多く、そこをチームで共有していきます。患者は、こんなことを言うと薬を増やされるのでは、入院させられるのではという恐れを感じています。自由な対話が可能なこと、感情について口にしていいことによっても、安心感を高めます」