ドヤ街という経済圏

 「僕は大学を卒業してすぐに、関西で手広く事業を展開していた介護事業会社に就職しました。そこでの担当がここ西成地区だったんです。そもそも実家もすぐそこってのもありますけどね」

 西成区で仕事をしているうちに、山﨑氏はこの街の特性と介護事業の関係について自分なりの考えを持つようになった。

 「東京の山谷とか神奈川の寿町なども同じですけど、今やドヤ街は高齢者の街です。さらに、生活保護をベースとした経済圏が成立している。痛し痒しのところはあるんですけど、これは社会的支援を受ける方にとって、すごく有利なことでもある。なんというのかな“主”になれるんです。

 例えば普通の街だと、高齢の生活保護受給者なんかは大家から敬遠されます。アパートに住みたくても相手にしてもらえない。ところが西成では逆。生活保護をもらっているから家賃のとりっぱぐれがない、という発想。さらにそういう人が集まると『異臭』や『ボヤ騒ぎ』などの問題が起こってきがちです。普通の街なら『出てけ』ってなるけど、西成は『あらまたいへんやったねぇお大事に』ってなもんです」(山﨑氏)

 勤めていた会社が倒産し、本人曰く「しかたなく」自分で会社を立ち上げることになったのが、2008年の6月。今では地域最大の介護事業所に成長した。

シクロが運営するデイサービス『エシュロン』

 「生活保護を前提とした生活圏」が成立しているおかげで、「西成全体がひとつのセーフティネット」になっていると山﨑氏はいう。

 「家賃は安い、食堂も安い、居酒屋なんかどうしてこんな値段なんってくらい安いし、格安の店として全国にその名を知られる『スーパー玉出』も徒歩圏内です。高齢者、精神障害者、生活保護受給者たちが本当に住みやすい街なんですね。だからそうした人たちの割合が高い。おかげで我々のような介護事業も多い」(山﨑氏)