利用者ファーストの街

 利用者と事業者の双方が集中しているという現実が、さらに利用者有利の状況を生み出している。

 「利用者側が事業者を選べるんですよ。つまり利用者が『主』になれる。よその地域だと、事業者が『それはやれません』って言うと、利用者は『そうですか、ならしかたないな』となるけど、西成では『でけへんのやったら別の業者に頼むからええわ』といえる。おかげでこの界隈の介護サービス業者は優秀ですよ」(山﨑氏)

 こうした状況は、痒い所に手が届くサービスの誕生にもつながった。

 介護保険内でやれること、やれないことの切り分け。これは介護保険サービスの永遠のテーマだ。例えば訪問介護の場合、ヘルパーがやれることは最低限の『身体介護』と『生活支援』だ。

 家の掃除洗濯は介護保険サービス内だが、仏壇の掃除はサービス外。高齢ご夫婦のお宅に訪問し、介護保険受給者の旦那さんのご飯は用意できても、奥さんの料理は作ってはだめ。

 「それでも、『あんちゃん、電球切れたんやけど』って電話を無視するわけにはいきませんよね」(山﨑氏)

 そうしたオーダーに細かく対応するために、シクロでは介護保険サービスと保険外サービスをミックスしたいわゆる混合介護の仕組みを発達させている。

 「スタッフの誰がどこにいるのかを把握し、即時連絡がとれるシステムを作り、急な助けを必要としている利用者と、一番近くにいるスタッフを繋げる取り組みを行っています。ただ、保険外と保険内のサービスをごっちゃに提供すると、いただく料金の切り分けが曖昧になってしまいます。そこが難しいところ。弊社では、保険外と保険内でスタッフを分けて対応するようにして、問題をクリアしています」(山﨑氏)

 山﨑氏は『社会的弱者』という言葉を使わない。たとえ生活保護受給者だろうが、介護保険サービスの利用者だろうが、決して弱者ではない。彼らがどんどん主張し、要求していくことが、携わる介護事業者を育てる糧になるのかもしれない。

(タイトル部のImage:末並 俊司)