健康の維持・増進や未病の改善に向けた取り組みへの注目が高まる今、これまで概念的にとらえられてきた未病の状態を科学的に解明しようとする研究が進みつつある。例えば2019年6月には、富山大学などが未病を定量化するという研究成果を発表した(関連記事)。一方、理化学研究所などが推進するプロジェクトでは、「健康関数」と呼ぶ新たな指標の開発を進めている。

 未病状態の末期から疾病発症に至る段階の評価は、糖尿病や認知症、ロコモティブ症候群などで多くの研究がなされ、マーカーの開発や指標化が進んでいる。これに対して、健康的な度合いの総合的な指標は世界的に見ても確立されていない。健康関数は、この領域の可視化を実現しようとするものだ。

 開発を進めているのは、「健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス」。理化学研究所を中核機関として、兵庫県および神戸市、大学・研究機関、多数の企業が参加しているプロジェクトである。

理研の渡辺恭良氏(写真:山本 尚侍)

 理化学研究所 科技ハブ産連本部 健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクターの渡辺恭良氏は、健康関数の狙いをこう話す。

 「個々人に合った健康維持や予防対策を行うには、まず自分の健康度合いを知る必要がある。同年齢で同じような生活を送っている人たちの中で、自分の健康度がどの位置にあるのか、科学的な根拠を示すための指標が必要だと考えた」。