自らホルモンを産生する生体の仕組みを模倣

 インテグリカルチャーでは試薬として販売されているホルモンを使用せずに細胞を培養する手法を研究する。

 「食品表示で『チキンエキス』『大豆由来』といった表記を見かけますよね。医療・医薬分野であれば、厳密に品質管理された高純度の試薬が求められますが、食品の場合はエキスのような自然な混合物が使用可能です。そもそも牛でも鶏でも魚でも、生物は体内で生理活性物質を産生して細胞を増やしているわけで、これと似た機構を人工的に再現できれば、高価な試薬がなくても培養肉ができるわけです」

 この発想から生まれたのが培養装置「CulNet System」だ。同システムは細胞を培養するためのプロダクト・バイオリアクターと、培養に必要な因子を供給するフィーダー・バイオリアクターで構成される。フィーダーには血清成分やホルモンなどの成分を産生する臓器の細胞を入れておく。どの臓器の細胞を使用するかは目的とするプロダクト次第だ。全てのバイオリアクターはチューブでつながれ、臓器由来成分が入った培養液が巡ることで、プロダクトの細胞が増える仕組みだ。

 「CulNet Systemは生体模倣なので、培養液中の成分は概ね分かっています。遺伝子に書かれていない危険物などが産生されることはないと考えていますし、閉鎖系なので異物混入のリスクも極めて低いです。ただ、内部で起きていることは代謝なので、様々な老廃物は排出されます。その影響については研究を重ねているところです」

 実は、培養肉よりも先に製品化の可能性があるのがスキンケア化粧品原料「CELLAMENT®(セラメント)」だ。培養過程で生じる細胞培養上清液に、肌に有用な成分が含まれていることが分かり、約2年かけて原料開発に取り組んだ。近いものは胎盤由来のプラセンタだが、セラメントはニワトリ胚体外膜細胞を使用し、安全な原材料を安定的に調達できるのが特徴だ。このほど量産体制も整ったことから、メーカーとの商談を進めている。

生体の機構を模した「CulNet System」。写真は研究開発用の培養液のため試薬で赤色にしているが、実際に培養肉をつくる際の培養液はほぼ無色(写真提供:インテグリカルチャー、以下同)
生体の機構を模した「CulNet System」。写真は研究開発用の培養液のため試薬で赤色にしているが、実際に培養肉をつくる際の培養液はほぼ無色(写真提供:インテグリカルチャー、以下同)
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※CulNet System:動物体内を模した環境を構築することで、細胞培養の高コスト原因であった成長因子の外部添加を不要となる。コスメから食材まで、利用範囲は多様。CulNet Systemは、インテグリカルチャー独自の汎用大規模細胞培養技術であり、安価で大量に細胞を培養できる。