2017年から国土交通省が実施している「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)採択プロジェクト」。これは、住宅や住生活の質の向上や、新たなビジネス市場の創出・拡大を、IoT技術を活用して実現しようとする試みだ。これまでに6回の募集が行われ、計11プロジェクトが採択された。ここでは、採択事例のうち、「高齢者・障がい者等の自立支援」や「健康管理の支援」などヘルスケア分野をテーマにしたプロジェクトを紹介する。今回紹介するのは、19年度の第1回公募で採択された、サンヨーホームズの「サンミットひたち野東ステーションフロント」だ(前回の記事はこちら)。

 「サンミットひたち野東ステーションフロント」は、高齢者(シニア)専用の分譲マンションだ。鉄筋コンクリート造、地上14階建て、総戸数は226戸。24時間常駐する専門スタッフや、医療施設の併設をはじめ、シニア世帯が住まうのに適した設備が整えられている。

 サンヨーホームズは、このマンションに2種類のIoT設備を導入して、管理運営スタッフや、離れて暮らす家族の見守り負担を軽減する。見守りシステムを構成する設備のひとつは、家電の使用状況から異常を検知するエネルギーセンサー、もうひとつが人感センサーによって異常を検知する通報システムだ。

システムの全体像。(1)家電の使用状況から異常を検知するエネルギーセンサー(2)人感センサーを備えた通報システム。2種類の見守りサービスを導入する(出所:サンヨーホームズ)

 家電の使用状況確認には、東京電力エナジーパートナーのサービスを利用する。エネルギーセンサーと呼ばれるIoT機器を分電盤の内部に設置。各世帯にある分電盤の主幹を測定し、どの家電がいつ、どれくらい使われていたかを、独自の機器分離アルゴリズムによって推定する。推定した電力の使用状況は、インターネットを通じて集計。WEBアプリから閲覧できる。住まい手はもちろん、離れて暮らす家族なども確認可能だ。

 同マンションでは、電力の使用状況から住まい手の生活動向を推察し、高齢者の見守りに役立てようとしている。

 例えば、猛暑が続く夏場にエアコンが稼働していない場合は、熱中症の危険性がある。また、普段就寝しているはずの時間帯に家電が頻繁に使われている場合には、痴呆行動などの可能性が考えられる。

 こうした危険性が推察できる状況を、エネルギーセンサーが検知した場合には警告を発信する。離れた家族へのメール送信のほか、常駐する管理スタッフにも通知がなされ、駆けつけと安否確認を行う仕組みだ。

 電力の使用状況から推察する見守りは、一定のプライバシーが確保されるため、カメラなどを用いたシステムに比べて、導入に対する抵抗が少ない。また、ウェアラブル端末などを日常的に身に着ける必要がないので、住まい手の負担も小さい。

 日常生活の中でストレスを感じさせることなく、緩やかな見守りを実践している点が特長だ。要介護の高齢者ではなく、比較的健康なシニア層をターゲットとしているマンションならではの仕組みといえる。