センシングを軸に「健康・快適」を目指す

 連携先となるスタートアップを探す際には「間口は広くしておきたい」(同氏)というものの、応募する側にメッセージが伝わりにくくなるかもしれない。そこで同社は、目標として前述の「健康的な空気」「快適な空気」「生産性の高い空気」を設定し、それを実現するための技術・アイデアを持つ企業や人を募集した。

 この3つに注目した理由としては、市場ニーズが高いと想定されること、既存の技術や製品を生かしながら展開できそうなことが挙げられる。

 「空調機というデバイスが世界中に設置されていると捉えたとき、そこにセンサーさえ取り付ければ、我々は温度・湿度情報、さらには生体情報も取得しやすい立場にある。そういう点では、健康や快適は既存技術と親和性の高い領域でもあるのです」

 同時にこれらの領域は、センシングしたデータを健康に結びつけていくという観点では「まだまだ弱い」(同氏)ため、そこを補強すべく外部の技術も使っていく。具体的には、分析には人工知能(AI)技術が必須になるだろう。事業としては、その人の普段の生活から各種データを収集し、病気になる前に警告するなど、センシングを軸に展開できると、同社は見ている。

2日間でじっくりビジネスプランを練る

 こうした想定の下、第1回となるAirTech BootCamp(2019年7月22~23日開催)では(1)空気中のアレルゲン・ウイルスセンシングによる種類の特定・可視化・定量化、(2)空気空間的アプローチでカビ・花粉・ウイルスを不活性化、(3)空間中における非接触でのストレスセンシング、(4)空気空間的アプローチで気分を落ち着かせる・ストレスの抑制の4テーマを設定し、参加者を募った(2019年6月12日付ニュースリリース)。当日は、応募者の中から選ばれた3つのスタートアップと1人の研究者が参加し、技術・アイデアを立案した。

写真2●第1回「AirTech BootCamp」の様子。3つのスタートアップと1人の研究者が参加。ダイキンの技術者やサムライインキュベートの担当者とチームを組んでビジネスプランを作成した(出所:ダイキン工業)

 プログラムでは、参加者とダイキンの技術者、サムライインキュベートの担当者がチームを組み、ビジネスプランを練り上げていく(写真2)。まず、ダイキンが持つ空気・空間に関する技術、これまでの協業事例、プログラムで利用できるアセット(技術、設備)などを紹介。途中、経過報告などをはさみながら、あとはひたすらディスカッションを重ね、最後に各チームのプランを発表する。

 参加した4者が持つのは、減圧/加圧技術、AIによる流体の解析技術、イオンを発生させて除菌する技術、核酸アプタマーの技術。例えば、減圧/加圧技術を利用したトレーニング設備にダイキンの温度制御技術を組み合わせるといったプランがまとめられた。

 2日間の成果は、チームごとのプランに留まらない。ダイキン側にとっては、ディスカッションを通して相手先の技術や人への理解が深まる機会になったという。

 「スタートアップの場合、経営者がどういうマインドやビジョンを持っているか、というのが重要」と三谷氏。時間をかけて話す中で、その人がダイキンに何を期待しているかを理解し、人間関係を築けたことが、協業に際してもプラスに働くと考えている。